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京都有次 カタログと価格表 (定価) から探るお勧め品<その2> 鍋編 Kyoto Aritsugu Copper pots

京都有次で庖丁と並ぶ人気の調理道具が打ち出しの鍋

京都有次では包丁と並ぶ人気の打ち出しの銅鍋


京都の老舗「有次」のお勧めの鍋を探ります。


450余年の歴史を誇り、和包丁の世界においてゆるぎないブランド力を持つ有次ですが、包丁と共に人気の高い商品がハンドメイドによる打ち出しの「鍋」です。有次では和食料理に欠かせない鍋類が各種揃っています。

 ※お勧め品 <その1>「包丁編」はこちら ↓

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カタログと価格表(定価)

有次では、つづら折りのカラー印刷カタログと、普通OA紙にプリントアウトした価格表を無料で送ってくれます。価格表には詳しい商品ラインナップと価格・サイズが記されています。商品購入は京都錦市場の店舗のほか、電話やFAXでの通販対応もしてくれます。

カタログ記載のレギュラー商品の他に、店舗向けの特注品や別注品など、プロユースのオリジナルも製作しており、全国各地の有名店から指名も多く、そのことが有次のブランド力をさらに高めています。

有次のカタログ 封筒に入る折りたたみサイズ 価格表も送ってくれる

有次のカタログ 2018年版 封筒に入る折りたたみサイズ 価格表も送ってくれる

京都有次の鍋の価格表 銅鍋・アルミ鍋などの材質が主流

京都有次の鍋の価格表 2018年版 銅鍋・アルミ鍋などの材質が主流

京都の有次 ひきひら鍋、段付鍋、おでん鍋、両手鍋、フライパン、木蓋etc

京都の有次 ひきひら鍋、段付鍋、おでん鍋、両手鍋、フライパン、木蓋etc


有次の鍋の特徴

有次の鍋類は職人の打ち出しによる手作りで製造されています。金属の板材を切断・折り曲げ・接合加工などで成型して、鍋肌を金槌でコツコツと叩いて1つ1つ丁寧に作られています。鎚目と呼ばれる綺麗な凹凸の金属肌が特徴で、キラキラと輝くような外観が大変美しい仕上がりになっています。工業製品のように大量生産できないため、販売価格はややお高くなりますが、1つとして同じものがない、完全にオンリーワンの存在ともいえます。

打ち出し(鎚目加工)による「加工硬化」

手打ち鍋の材質には主として銅やアルミが使われます。これらの金属は熱伝導率が良いため、料理をするには最適な素材なのですが、比較的柔らかく変形しやすい金属でもあります。そのため鎚目加工で作ることで本体の強度を高めています。金属は金槌で叩いくことで硬くしまります。これを金属の「加工硬化」と呼びます。

金属は高温加熱する「焼きなまし」という熱処理をすると、歪んでいる組織が再結晶化・均質化して軟化します。材料を柔らかく軟化させることで、曲げたり叩いたりする加工が楽になります。焼きなましを行って加工しやすくなった材料を成型して、金槌で叩いて絞めることで、金属組織が再び歪み、結果として硬く締まった強度のある鍋が出来上がります。

 

鍋の材質は、銅、真鍮、アルミの3つ

有次の打ち出し鍋で使われる材質は、銅、真鍮、アルミの3つ。
特徴は以下の通りです。

・アルミは安価で軽く熱伝導率が良い。ただし腐食や変色しやすい。
・銅は高価で最も熱伝導率が良い。変色はするがお酢と塩で簡単に戻る。
・真鍮は熱伝導率が劣る半面、耐食性に優れ変色しにくい。黄金色に近く美しい。

プロのように仕上がり拘る人は銅鍋、おもてなし等の見映え重視なら真鍮鍋、コスパ優先の普段使いならアルミ鍋、といった住み分けになるかと思います。銅と真鍮は素材価格が高いので価格もかなり高額になります。

 

お勧めの鍋はどれ? 

有次でお勧めの鍋は、やはり熱伝導率に優れる銅製の鍋です。その中でも以下の3つは、どんな家庭でも1つあると便利で、特にお勧めの品です。

・銅 ゆきひら鍋 15cm 16,740円
・銅 ゆきひら鍋 18cm 21,060円
・銅 うどん鍋 26cm 29,700円

京都有次 銅ゆきひら鍋 15cm / 落とし蓋用の木蓋が安価で揃う

京都有次 銅ゆきひら鍋 15cm / 落とし蓋用の木蓋が安価で揃う


銅 ゆきひら鍋
鎚目の美しい片手鍋です。本体の板厚はノギス計測で実寸1~1.2mm前後。とても薄い作りです。熱伝導率に優れた銅+薄い板厚のおかけで、驚くほど早く水を沸騰させることができます。短時間で素早く加熱し、短い時間内に食材の芯まで火を通すことで形崩れ・煮崩れしない調理スタイルを良しとする和食の煮物には、最適の手鍋です。内側は錫引き加工。錫は酸化や腐食に強く、毒性が低く、人体に殆ど影響のない安全な金属です。食材を選ばず、醤油や塩や酢を多用する和食の調理にも向く金属です。

有次のゆきひら鍋の特徴は2つ。1つ目は大きく尖ったカラスぐち。独特の形状をしていますので、このカタチを見ただけで「これは有次だね」とすぐに分かります。もう1つの特徴は深さのある形状です。他社の製品よりかなり深くボリューム感があります。

銅ゆひきらで、一番のお勧めはずばり15cm径サイズ。高さは7cmあります。お湯やミルクを沸かしたり、付け合せの野菜や玉子を3~4個茹でたりと、ほぼ毎日のようにキッチンで活躍してくれます。御みそ汁作りなら3杯位は十分に対応します。とにかく出番が多く、試しに買ったとしても絶対に後悔することのない鍋です。

一緒にお勧めしたいのが、汎用性の高い18cm径サイズです。こちらも揃えておけば大変便利です。高さは9.5cmもあり、他社と比較してもかなり深い作りになっています。肉じゃがなら2~3人前作れるサイズ感です。うどん・そば・ラーメンなど麺類を1~2人分を茹でるのに最適なサイズです。

大きなカラス口と深い形状が特徴。有次の銅ゆきひら鍋。

大きなカラス口と深い形状が特徴。有次の銅ゆきひら鍋。

木柄が付いた「ゆきひら鍋」の真髄は、そのコンパクトな手軽さにあります。よって、一般家庭では大きなサイズのゆきひらは不要です。20cmクラスからは柄も結構大きく長くなるため、取り回しが悪く感じたりします。大量に調理したい場合は、素直に容量の大きな両手タイプの段付鍋を選ぶと良いでしょう。

有次の銅段付き鍋

有次の銅・段付鍋/7寸21cm 大きなサイズなら両手鍋が便利


銅 うどん鍋
有次の中で割と馴染みのある鍋が「銅うどん鍋」。この鍋を卓上で使用する料理屋さんも散見され、有次を知らなくても見たことのある方が少なくないかと思います。元々はうどんすき鍋として作られている口が広くて浅い卓上用の専用鍋ですが、寄せ鍋やしゃぶしゃぶ鍋としても利用でき、冬場はこれ1つあるとかなり重宝する鍋です。

26cmサイズはカセットコンロにもフィットし、卓上でも邪魔になることがありません。とても使い勝手が良く、2~3人前を目安としている大きさです。4、5人一緒で食事するなら1つ上の30cmサイズが良いでしょう。

京都有次 銅製のうどん鍋 26cm / うどんすき、しゃぶしゃぶ鍋としても流用できる

京都有次 銅製のうどん鍋 26cm / うどんすき、しゃぶしゃぶ鍋としても流用できる



特別なお祝いごとがあれば、揃えてみたい特別な鍋

手打ちの銅製鍋はとても高額です。その中でも特に高額な商品の中から、結婚祝いとか、7年目の銅婚式とか、新築祝いなど、特別なタイミングに、お祝い物として揃えてみたい(おねだりしてみたい)お勧め鍋を追加で2つほど紹介しておきます。

・銅 おでん鍋 
・銅 釜飯セット(銅羽釜)  

おでん鍋
プロの料理人や料理好きな女性にとっては名立たる調理道具の老舗も、世間一般の男性諸氏にしてみれば「何ソレ、ゆうじ(有次)って読むの?」程度の話であり、馴染みの薄い存在でしかありません。そんな一般の男性陣にも有次の存在を多少は知らしめたのが、人気グルメ漫画美味しんぼ」への登場でした。美味しんぼで有次を知ったという方も少なからずいるかと思います。

とあるエピソードで、主人公の新聞記者・山岡士郎が、フレンチの修行をしたいというおでん屋の跡取りを連れて京都に出向き、有次の紹介でおでん鍋を作る職人の工場を訪ね、そこで見た職人技に感服して、いろいろと勉強・改心する的な内容です。 

この話中に、有次の御主人と鍋づくり名人の方が登場します。その名人は井上忠吾さんという職人さんです。漫画の中では、実際に井上さんが銅おでん鍋を作る工程が分かりやすく描かれています。有次の古いカタログ冊子の中にも、そのお名前を確認することができます。

作品が描かれた時代、1980年代~から2000年代中頃にかけて、銅の価格は現在ほど高騰していませんでした。現在から見ると信じがたい贅沢なのですが、なんと3mm厚もある銅板を使って「おでん鍋」を叩いて打ち出している描写が作中に出てきます。銅で3mm厚といえば、世界中から羨望のまなざしを集めるフレンチ銅鍋の名門「ムヴィエール」や「マトファーブウジャ」の中でも、コレクター垂涎となる古いビンテージ級に使われているものぐらいです。そのような厚板をハンドメイドで手打ちするともなれば、お値段が張るのも仕方ありません。井上さんは、ゆきひら鍋、段付鍋、寸胴鍋など有次の鍋の多くを手がけていたようです。

銅価格の推移(1980~2019年) LME(ロンドン金属取引所)での先物清算値

銅価格の推移(1980~2019年) LME(ロンドン金属取引所)での先物清算


以前、大手酒造メーカー「月桂冠」のテレビCMにも、有次のおでん鍋が使われていました。その強烈な存在感ゆえ、すぐ気が付いた方も多いと思います。人気漫画やTVCMなどに登場する話題性も手伝って、有次の鍋の中でも知名度が高いのが銅製のおでん鍋です。高級おでん鍋といえば有次、といった感じでアイコン化されている感もあります。

月桂冠「つき」TV-CM 出演:永作博美  有次のおでん鍋

月桂冠「つき」TV-CM 出演:永作博美  有次のおでん鍋

というわけで、寒い時期しか使わない専用の鍋を紹介しました。専用鍋ですから使用頻度も低く、コスパは最悪となってしまいますが、ご予算が許すようなら1つ揃えてみたいですね。お値段は24cm角サイズの場合、10万円で少しおつりが来ますよ!(苦笑)。以前は6万円程度で買えましたが、銅の高騰でどんどん値上げされて、今や普通の方は購入できないような金額になっています。銅の板厚も美味しんぼで描かれたような3mm厚ではなく、やや薄いと思います。

銅おでん鍋
 中 24cm角 94,824円 
 小 21cm角 88,128円   CMで使われているのはこの小サイズかな?


美味しんぼの作品発表から30年ほど経過しており、当時の職人さんだった井上さんも年齢的には既に故人となられているかと想像しています。有次で以前「鍋を作る職人の方が亡くなったため」云々、職人さんが変わって作りも微妙に変わっているという類の話を聞いたことがあります。おでん鍋は取っ手の作りが昔と今では少々違いますのでわかり易いです。
包丁の沖芝さん、鍋の井上さん・寺地さんら、当時の名人たちとその素晴らしい技が、今の有次の名声を不動のものにしたと思います。


釜飯セット(銅の羽釜)
もう1つ、10万円近い高額商品ではありますが、特別な機会に予算が許す方にお勧めしたいのが、銅の羽釜です。「釜飯セット」という名前でカタログに記載されています。かなり高額の商品ではありますが「おでん鍋」とは違い、ご飯を炊くための鍋ですから、ほぼ毎日のように使えます。したがってコスパは極めて高く、元は取れる?的な鍋ではあるかと思います。電気炊飯器と違って壊れることはほぼ無いので、内側の錫を引き直して使い続けるなら、捨てない限り使い続けられると思います。

有次のブランドに価値を見いだせるなら検討しても良いかと思います。もし気に入れば一生モノのお鍋となるでしょう(以前は、釜本体、木蓋、受け台を個別に購入できましたが、今は分かりません)。お釜だけなら2~3万円安かったと記憶しています。

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包丁にしろ、銅鍋にしろ、原材料価格の高騰でドンドン値段が上がっています。買える時に買っておくのが得策です。おでん鍋にしろ羽釜にしろ、手入れしていれば30年~40年、あるいはそれ以上の長いスパンで使い続けることができます。大切に使えば自分の子供に引き継ぐこともできますので、一考に値します。


アルミ鍋や真鍮鍋はどうなの?

今回、お勧めの鍋は全て銅製の鍋を選びました。用途・使い勝手・性能面で総合的に判断しました。アルミ鍋、真鍮鍋は、用途によって向き不向きが顕著でなので、何に使うかよく考えてから選ぶと良いでしょう。

真鍮製の鍋は、どちらかといえば商用の「見せ鍋」用です。その黄金色の美しさと変色の少なさから、店舗でのテーブルサービスや演出が主たる用途になります。実用品としては銅やアルミほど熱伝導率が良くないことから、家庭での普段使いとしてはお勧めしません。店舗もしくは来客用に向く材質です。

アルミ鍋は、安くて軽くて錆びず熱伝導率も良いので、多くの家庭で使われています。野菜を茹でるなど、ちょっとした煮炊きには手軽でとても便利です。ただアルカリと酸の両方に弱く腐食(溶け出したり、終いには穴が開いたり)するため、PHの偏った食材を長時間調理することには向きません。またゆで卵を作ると殻とアルミが化学変化を起こし黒くなってしまいます。どうしても食材や調理時間は選びます。

銅鍋は高額であるという大きなネックはありますが、性能的にも料理の仕上がり的にも美的にも優れ、しかも安心して使えます。高くても良いものを買って大切に長く使うことが一番安上がりですから、奮発してぜひ銅製の鍋を購入してみてください。開眼間違いなしです。

追伸
銅鍋の内側は「錫引き」になっています。錫は230度で溶けてしまいます。揚げ料理や焼き料理では200~210度を目安に、それ以上高温にならないようにしましょう。



京都有次 カタログと価格表 (定価) から探るお勧め品<その1> 包丁編 Kyoto Aritsugu knifes

京都有次の包丁

京都の老舗「有次」の包丁

有次では鍋から菜箸まで大小様々な料理道具が揃う

鍋から菜箸まで大小様々な料理道具が揃う


京都の老舗「有次」のお勧めの包丁を探ります。


創業450余年の老舗 包丁・料理道具店

京都有次(ありつぐ)は創業以来450余年の歴史を誇る老舗料理道具屋さん。包丁の世界では「西の有次、東の正本(総本店)」との言葉が広く浸透するなど、大変有名な包丁屋さんです。

戦国時代の永禄3年(1560)に刃物鍛冶・藤原有次によって興り、江戸時代には京都御所(以前の皇居)の御用鍛冶として出入りを許され、明治以降は料理包丁を中心とした刃物屋および料理道具屋へと転じて今日に至ります。

※--※--※--
幕末から明治にかけての争乱期、その舞台となった京都や周辺地区では武器となる日本刀の需要が一気に高まり、腕の良い刀(かたな)鍛冶が全国から多く集まってきたと言われています。明治維新以後、
太平の世となると廃刀令とともに仕事が無くなった刀鍛冶たちの中から、日本刀を作る手法を用いて包丁鍛冶へと転じ、日本刀のような素晴らしい切れ味を誇る包丁を作るものが現れました。有次はそのような鍛冶屋とのつながりで高品質な
包丁を扱うこととなり、その包丁が評判となって名声を得て有名になっていくという背景があったようです。ちなみに現在の有次は刃物の鍛冶は行っていません。和包丁の多くは大阪・堺の職人さんたちによってOEM生産されています。
※--※--※--

強固なブランド力で垂涎の的

有次が販売する製品は、和包丁や手打ち鍋など職人によるハンドメイドの商品が多く、大量生産・大量販売とは一線を画すビジネススタイルを取っています。オンラインモール、ネット販売全盛の時代に、店舗販売重視という昔ながらの商いスタイルを守っています。それがかえって老舗らしさを際立たせ、人気に拍車をかけています。

長い歴史を背景とした老舗の信頼とブランド力、各種メディア等にしばしば取り上げられる抜群の知名度も相まって、プロの調理師から料理好きの主婦まで幅広く愛され、和食の料理道具が好きな方にとっては、キッチンに揃えたい垂涎のアイテムと化しています。
 

店舗は京都錦市場の本店のみ

有次の店舗は1980年代に移転-開設した京都錦市場本店のみ。あとは百貨店の阪急梅田に販売コーナーがあるだけです。かつては都内の百貨店にもコーナーがあり、池袋西武や、数年前まで東京の日本橋高島屋にも出店していました。残念ながら現在は撤退してしまい、現在関東に拠点はありません。10年ほど前には公開していたウェブサイトも現在は閉鎖しており、公式サイトやオンラインショップの類も有りません(※高島屋オンラインショップで洋包丁の一部が購入可)。

店舗には和包丁や銅鍋など高価な商品がずらりと並びますが、安価なアイテムも多数あります。有名料理店から一般家庭まで、京都という街の「食」を支える一役を担っています。

錦市場にある京都有次の本店

錦市場にある有次本店

電話やFAXで注文、着払い配送の通販が可能

ネット全盛のご時世に、ウェブサイトもオンラインショップもありません。気軽にAmazonでポチることもできません。そのため有次の商品入手はややハードルが高いのです。が……。

実は電話で頼むとカタログと価格表を郵送してくれ、それを元に電話やFAX等で注文を受けてくれます。アナログ的ではありますが、着払いで製品を送ってくれます。遠方の方でも購入できますので、なかなか心強いです。

ただし注意しなければならないポイントが2つあります。
包丁は、実際に手にした時に感じる重さ・バランス・手の馴染み具合などの感触がとても大切ですから、直接お店を訪れての購入をお勧めします。ちなみに人気のあるお店なので、いつも商品の在庫があるという訳ではありません。品切れ・品薄で半年以上待って購入するような包丁も少なくありません。お目当ての包丁が決まっているなら、事前にしっかり在庫を確認してからお店に訪れる必要があります。


カタログと価格表

有次は、つづら折りのカラー印刷カタログと、エクセルの表シートをプリントアウトしたような価格表を無料で送ってくれます。カタログには主だった商品がずらりと掲載されており目移りします。それでも全体の一部でしかありません。型抜き・物相など小道具など掲載しきれないほど沢山の商品があります。価格表の方には、より詳しく商品のラインナップと価格・サイズが記されています。そちらも参考にして商品を選ぶと良いでしょう。

有次のカタログ 価格表も送ってくれる

有次のカタログ 封筒に入る折りたたみサイズ 価格表も送ってくれる

京都の老舗、有次の包丁は、価格表でサイズや定価を確認できます。

京都の老舗、有次の包丁は、価格表でサイズや定価を確認できます。

京都有次の包丁価格表 2018年版 シンプルで値段も分かりやすい。

京都有次の包丁価格表 2018年版 シンプルで値段も分かりやすい。

※定価は変動しますので最新の価格表を取り寄せてご確認ください。

和包丁の刃渡りの測り方は2通り。イラスト付きで親切に掲載してくれています。

和包丁の刃渡りの測り方は2通り。イラスト付きで親切に掲載してくれています。


和包丁のグレードにつて

有次の和包丁のグレードは以下のようになっています。


真鍛(純日本鋼) 本焼 全身が刃物鋼のみで鍛造(カタログ・価格表は未掲載)
上製 霞包丁 鋼材:青紙2号 刃物鋼と軟鉄の2種類を鍛接した合わせ包丁 
特製 霞包丁 鋼材:白紙2号 同上。白紙鋼を利用。 
登録 霞包丁 鋼材:白紙2号 同上。

 
有次の和包丁は大別すると4つのグレードがあります。
最上級は本焼き包丁。全身が高級刃物用の炭素鋼1枚だけで鍛造された包丁です。プロの板前さん達が使う製品です。価格も極めて高価なため特別扱い。カタログや価格表に記載はありません。ただし京都の店舗では柳刃や薄刃などの本焼き包丁がずらりと並んでいます。

一般の方が使う製品群の中では「上製」が一番良いグレードとなります。鋼材は日立金属の高級刃物鋼「青紙」を利用しています。次に「特製」と呼ばれる中間のグレードがあります。同じく日立金属の高級刃物鋼「白紙」と呼ばれれる刃物鋼材を使っています。一番下の「登録」はどちらかと言えば家庭向けグレードの位置付けですが、普通の方ならこれでも十分すぎるぐらい良い包丁です。なぜなら登録は特製と同じ鋼材の「白紙」を使用しているからで、実は一番お得なグレードです。
ちなみに上製と特製は本職のプロが遜色なく使うレベルの品質です。

有次の上製柳刃。日立金属の安来鋼「青紙2号」を使った霞の刺身包丁

上製の柳刃。日立金属の安来鋼「青紙2号」を使った霞の刺身包丁


和包丁の鋼材について

有次の和包丁は基本的に日立金属の刃物鋼である安来鋼「青紙」と「白紙」が使われています。白と青の違いは含有する成分の違いです。白紙は所謂「鋼(はがね)」で高品質な刃物用の炭素鋼です。その白紙の成分にCr(クロム)とW(タングステン)を添加した合金鋼が青紙です。

白紙 = 炭素鋼
青紙 = 白紙 +クロム +タングステン

クロムとタングステンを添加することで耐摩耗性が上がるため、青紙の方が長切れします(刃持ちが良い・キレが長く続く)。ただし白紙より鋼材価格がやや高価になります。青・白ともに2号鋼・1号鋼の種別があり、2号鋼にC(炭素)を増加させて硬度を高めたものが1号鋼になります。

刃物用炭素鋼の種類

ちなみに青紙の鋼材単価が高いからといって、白紙の食材を切る性能が青紙に劣るということはありません。それどころか逆の感覚すらあります。

白紙は添加物のない純粋な炭素鋼なので、大変砥ぎ易くて直ぐに鋭くて良い刃が付きます。言葉にするのは難しいですが、研ぎがビシッと決まると、食材に噛みつくような感覚でスパッと刃が入り、抜群の切れ味を発揮します。特に白紙一号鋼(白一)の包丁は惚れ惚れれするような切れです。

一方、青紙はややジェントルな感触で、食材を静かに切っていく感覚の切れ味です。キレが長持ちする青紙鋼なので、一度に大量の食材を捌く業務用途や、砥ぐ回数を減らしたい方は青紙を。そうでなければ通常は白紙でよいかと思います 。

砥石を持っていない方、自分で砥げず有料で研ぎ屋さんに出す方は、最終的に青紙の方が安くつくきます。ただしせっかく和包丁買うなら砥石を買って練習して自分で砥げるようになりましょう。刃を当てて引くだけの安物のシャープナーとかご法度です。 

 

有次の真髄は和包丁

有次の人気を不動にしているのは和包丁への評価によるものです。そのため有次の包丁を検討している方は、和包丁の購入を考えている方が多いかと思います。

職人が手作りで火造り鍛造した切れ味抜群の和包丁は、世界中の料理人たちからの賞賛と共に、その名声を欲しいままにしています。世界で最高級に位置し、他国が並ぶことのできない品質を誇る和包丁。せっかく日本に住んでいるわけですから和包丁を使いこなして、その極限ともいうべき切れ味を思う存分楽しみたいところです。

そこで家庭用にお勧めの和包丁を4本選んでみました。和包丁は、食材と使用目的が明確に決まっている専用設計の包丁になります。万能型ではないため使用頻度は少なくなります。したがって家庭用の場合はコスト重視で構いません。

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和包丁は片刃が基本。両刃より鋭利です。


お勧めの和包丁はどれ?

一般家庭で使うおすすめの「和包丁」

・登録 柳刃刺身包丁 8寸(24cm)  17,280円
・登録 出刃5寸(15cm)  14,040円
・特製 アジ切 4寸(12cm)  10,800円
・特製 菜切包丁(薄打ち)5寸(15cm) 12,980円


まず1本目は刺身を切る時に使う細長い刺身包丁。
一般家庭のキッチンサイズを考えると、登録・柳刃の8寸か9寸あたりが使いやすい長さになるでしょう。8寸なら狭いキッチンでも無難に扱える長さです。9寸は家庭用の包丁としては少し長く感じるかもしれませんが、カウンタートップ一体型のシステムキッチンなどスペースが十分ある場合は全く問題ないと思います。また腕に自信のない方は9寸の方が刃を長く使えるので逆に楽だったりします。和包丁の扱いに慣れている上手な方は、刃が短くても手際良く刺身を引くことができますので8寸でいいでしょう。8寸なら収納的にも困りません。


続いて2本目は、魚をおろす出刃包丁。
出刃包丁は登録・5寸がお勧めです。刃渡り15cmになります。これがあれば大抵のモノは捌けます。本来なら大・中・小で揃えるものですが、一般家庭では出刃の使用頻度が少ないしコスパが悪く高くついてしまいます。なので汎用性の高い5寸サイズを1本持つのがお勧めです。30-40cm程度の中型の魚から60-70cm前後の大型の魚まで、大半のモノは捌けます。出刃については「小はそこそこ大を兼ねる」ということです。
※カットされた魚しか買わない人は要りません。


3本目のお勧めは刃渡りの短い小さなアジ切包丁。
たとえ丸のままの魚は買わなくとも、ご家庭で秋刀魚やアジなどを買って開いたりすることもあるでしょうから、この4寸サイズのミニ和包丁を1本持っていると便利です。小さな魚は小出刃よりアジ切の方が楽です。ネギやきゅうりを刻んだり包装の袋を開けたりと、万能ペティ的にも使えますので検討してみてはどうでしょうか。

最後の1本は野菜切りの専用、菜切り包丁その中でも「薄打ち」が一番のオススメ。切れ味抜群の和包丁を毎日のように普段使いできます。プロが好んで使う片刃の薄刃包丁を、一般の方でも扱いやすいようにと改良したものが両刃の菜切り包丁です。'70年代ぐらいまでは、かなりの割合でこの手の包丁が家庭に1本置いてありました。切っ先が尖がっていない黒打ちの四角いカタチの包丁です。国内でもまだまだ製造されていますし、この形が好き+使いやすいという人も少なくありません。海外でも「Vegetable Cleaver」というものがありますし、四角い包丁を菜切(Nakiri)と呼びます。

現代は、スーパーマーケットでカット済みの肉や魚をパック製品として買うことが一般化しています。そうなると家庭では、野菜を切ることが包丁の主たる作業となります。つまり野菜を切ることに特化した菜切包丁は、和包丁の中では最も家庭で使用頻度の高い包丁ということになります。

京都 有次 菜切包丁 黒打ち

有次の菜切包丁。特製・5寸サイズ。黒打ちで幅が広くミニ中華包丁のような形


有次の菜切包丁ラインナップ
・上製菜切り 5.5寸 / 5寸 青鋼 磨きタイプ
・特製菜切り 5.5寸 / 5寸 白鋼 黒打ちタイプ
・特製菜切り(薄打ち) 5.5寸 5寸  白鋼 黒打ちタイプ ←お勧め 


有次の菜切包丁は、青紙を使った「上製」と、白紙で黒打ち(包丁の半分が黒い)の「特製」があります。長さは5.5寸と5寸。有次の菜切り包丁は峰から刃先まで厚みが結構あり、硬い葉根野の根の部分などもザクッと切るのにもってこいです。黒打ちの特製には「薄打ち」というカタログに掲載されいないタイプもあります。全体が薄く仕上げてあるので、食材をカットした時に抵抗が少なく刃がスッと入り、抜けや切れ味が良く感じます。ニンジンや大根などカットしても食材が途中でバリッと割れにくく最後まで刃が進みます。特に固いものを叩き切るようなことがないのでしたら、薄打ちタイプが一番のお勧めです。

和の菜切り包丁というのは通常5.5寸が一般的なサイズです。が、有次の菜切はやや峰厚があって重量も重めなので、非力な女性などにはバランスや重さの感触的に5寸サイズが取り回しが楽でしっくりくる方が多いと思います。


もっとディープに浸る和包丁の世界 

たとえ本職のプロでなくとも、海釣りが趣味の方は釣果で何匹も魚を捌きます。公設市場で大きな魚を丸のまま買って頻繁に捌くお魚好きの方もいるでしょう。また技術を磨いて飾り切りとかやりたい人もいるかと思います。そんなハイエンドアマチュアの方も納得のプロ用包丁が有次には沢山あります。

・大根の桂剥き・野菜を極薄に切りたい→ 上製 鎌形薄刃7寸21cm
・お皿の絵柄が見えるような薄造りにしたい→ 上製フグ引き尺寸30cm
・小さな魚を沢山捌く→ 上製 相出刃3.5寸10.5cm
・大きな魚を捌いてついでに刺身まで一気に引きたい→  特製 柳刃出刃8寸24cm
・飾り切りや早切りしたい→ 上製 ムキモノ包丁

時間と費用は掛かりますが、柄を八角にする、サヤを付けるなど、オプション的な要望にもいろいろと応えてくれます。既述のとおり、プロ向けの本焼き包丁などもありますので、腕と使用頻度と予算が許す方は、そちらも検討されるとよいでしょう。
まずはカタログと価格表を取り寄せてみてください。
ディープな有次の和包丁の世界にどっぷり浸ることができます。
その中からきっと必要な包丁が見えてくると思います。


有次の洋包丁について

和包丁で人気を博し評価も高い有次ですが、洋包丁は普段使いに向くオーソドックスな家庭向けの包丁をメインに展開しています。錆びやすい炭素鋼だけで作られた全鋼包丁と、刃材の炭素鋼をステンレス鋼で挟んだ割り込み包丁に大別されます。

全鋼包丁

・上製 炭素鋼製 峰幅が特製より厚く丈夫な作り。製作中止が多い。
・特製 炭素鋼製 一般的な洋包丁で三徳や牛刀や骨スキガラスキ等を多数展開。
・ツバナシ 炭素鋼製 一般的な洋包丁で鍔の無いシンプルな形状。

割り込み包丁
・平常一品 本体はステンレスで刃の部分だけ鋼のサンドイッチ構造。
・和心 同上。朴の木柄が付いた和包丁型と一般的な洋包丁型の2種類あり。
    ※洋包丁型はツバ(鍔)有、ツバ無しのモデルがある


全鋼包丁のグレードは一般的な「ツバナシ」・「特製」・「上製」の3つに分かれます。ただし現在は上製包丁のモデルは製作中止が多くなって殆ど見かけません。上製は全身がやや厚くしっかりした作りです。刃材は国内メーカーから調達した刃物用の炭素鋼が使われています。以前はスウェーデン製(ウッデホルム社)の炭素鋼を使用した商品などもありました。

割り込み包丁は「平常一品」と「和心」の2種類。炭素鋼の刃材を錆びにくいステンレス鋼で両面から挟んだ張り合わせの割り込み包丁です。「和心」には和包丁のような柄が付いた和包丁型と一般的な洋包丁型があります。洋包丁型はツバありとツバなしに分かれています。

刃材に使われる鋼材は、和包丁で用いられている高級刃物鋼ではなく、より安価な鋼材が使われています。洋包丁は牛刀や三徳包丁がメインなので、和包丁のような極限の切れ味を求めるニーズはありません。青紙や白紙のような専用の高級刃物鋼でなくとも砥ぎ易く良い刃が付けば十分ということです。

京都有次の上製三徳牛刀

現在は生産中止の上製洋包丁は峰が厚く頑丈。万能ともいうべき三徳包丁。


お勧めの洋包丁はどれ?

一般家庭で使う「洋包丁」のお勧めはズバリ以下のとおり。

洋包丁
・特製 三徳牛刀18cm 定価 13,500円
・特製 ペティ12cm  定価 8,424円
 (2本セットの組み合わせで揃えましょう)

せっかくなら全鋼包丁を

普段使いの包丁は洋包丁を大小セットで揃えることをお勧めします。洋包丁は現代の食生活にマッチしており、万能で扱いやすく何かと便利。18cmの特製三徳包丁と12cmのペティのセットを選べば間違いありません。手の大きい大柄の女性や男性が使う場合は、牛刀21cmとペティ15cmを検討してみても良いでしょう。

家庭で使うなら錆に強いステンレス製を勧めたいところですが、刃の部分は錆びる炭素鋼なので、管理の手間は大して変わりません。であれば有次の本流である良く切れる全鋼タイプの包丁をお勧めします。

有次・上製三徳牛刀包丁

砥ぎ易く良い刃のつく鋼の包丁がお勧め。


鋼の包丁は、酸化や経年劣化で変色もしますがそれも味わいです。初期の輝きをキープしたい場合は、たまにクレンザーとピカールで磨いてあげればピカピカになります。

日常的に使っている包丁に浮く錆びはたかが知れています。うっかり放置して変色したり錆が浮いたりしても、クレンザーや耐水ペーパーでササッと磨けば簡単に落ちます。サビトールという消しゴム的な便利なものもあります。使ったら洗ってしっかり拭く。メンテナンスはいたって簡単です。

包丁のキレは、鋼材の品質と研ぎと形状の3つが重要です。
有次の包丁は形状がとても良いのが特徴です。
良い鋼材を使ってしっかり砥いでも形が悪いと切れの良さは体感できません。
有次ならではの感触がありますので、ぜひ試して見てください。

美味しいご飯の炊き方 ( 羽釜でご飯を炊く方法) ガスコンロでご飯を炊く ( 銅の羽釜編)

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美味しいごはんを炊くために、その1 
ガス炊飯で炊く。

美味しいご飯を食べたいならガス炊飯がお勧め。電気炊飯器とガス炊飯の大きな違いはズバリ「火力」。炊飯時の水分蒸発量が電気炊飯器の場合で6~10%、ガス炊飯器は13~15%と言われています。極端に表現すると「少なめの水でちまちまと時間かけて温度を上げて炊く」vs「多めの水を高火力でガンガン沸騰・対流・蒸発させて炊く」という違いです。いつの時代も、昔ながらのかまど炊きごはんが結局のところ一番美味しいといわれますが、それは強大な火力のおかげです。電気炊飯器メーカーが莫大な開発費を投じて目指しているのも「かまど炊き」の味。だったら最初から火力の強いコンロ直火で炊けば話はカンタンです。

美味しいごはんを炊くために、その2 
4つの基本を理解する。

炊飯の極意は4つ。

1) 米
美味しい米を知り、その品種に適した方法で炊く。

2) 水
水質、洗米方法、浸水時間、水加減を正しく行う

3) 加熱時間
「鍋の中が沸騰するまでの時間」
「沸騰を保っている時間」
「蒸らしている時間」
以上、各3つの段階での火加減・時間調整を正しく行う。

4) 調理器具
お米をムラなく均一に加熱し、適切に蒸らすことができる炊飯器具を使う。

美味しいごはんを炊くために、その3 
美味しい米を知る。

以下の4つの項目の中で、美味しいご飯を食べるための一番大切な事項を1つ選ぶとしたらどれでしょうか? 

・1. 精米したてのお米を炊く
・2. 美味しいお米を買う
・3. 最新の高い炊飯器を購入する
・4. 炊飯器のサイズに適した量で炊く

こたえはカンタン。正解は2番目の「美味しいお米を買う」です。
これについては「味」そのものが違うのですから仕方ありません。
神戸ビーフ」や「松阪牛」や「佐賀牛」が美味しいのと一緒です。
大前提の基本は間違えてはいけません。

 

米の食味ランキング

美味しいごはんを食べたいのであれば、「美味しいお米とは何か」を定義しなければなりません。しかし味覚や好みは千差万別。ですから1971年から食味試験を行っている日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」を見るのが手っ取り早く公正です。

ランキング試験|食味試験|日本穀物検定協会

日本穀物検定協会は以下の3つの試験を実施しています。
・官能試験
・理化試験
・ランキング試験

このランキングは毎年発表されるので、それを見てお米を購入すれば、ほぼ間違いなしです。この味覚ランクで「特A」であれば美味しいお米ということになります。その中から好みのものを選べば問題ありません。お米は、アミロース含有量の高低により、 すっきり系 or もちもち系に大別できます。

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美味しいお米を買うことが一番大切

我が家のお気に入りは山形産「つや姫」。ほぼスタメンで常備してます。青森の「青天の霹靂」もなかなか美味しいです。

ここ最近のランキングで象徴的だった出来事は、長年にわたって美味しいお米の代名詞だった新潟の「こしひかり」が2018年に特Aから落ちたこと。2019年の2月発表のランキングで返り咲きましたが、全国にブランド米が増えて、一強の時代は過去のものになりました。時代は変わります。

 

精米や保存にこだわってみる

精米にもこだわるとより美味しいごはんが炊けます。食す直前に玄米を精米するのが一番良い方法です。しかし誰もが精米機を持っているわけではありません。その場合は、できる限り精米日の浅いものをチョイス。

お米の扱いは生鮮食品と一緒です。購入したお米は冷蔵庫に保管を。近年では、最初に荒く精米して1日寝かせた後に精米する「24時間熟成米」や、玄米を氷温域で長期間寝かせる「氷温熟成米」などもあり、いろいろと工夫したお米の保存法も発達しています。自分が出来る範囲で新鮮さを保ち、旨みを減らさないor増す工夫をして保存・精米するとよい。

 

美味しいごはんを炊くために、その4 
正しい鍋釜を選ぶ。

鍋釜は、材質と形状と容量(サイズ)が大切です。
まずは材質。熱が伝わる早さの指標の熱伝導率から見てみましょう。

銀 420
銅 398
金 320
アルミ 236
真鍮 106
鉄 84
ステンレス/クローム系 26
チタン 22
陶器 1~1.6

一目瞭然です。科学を前に、偽りの宣伝、プラシーボ効果、オカルト的妄想の類が入り込む余地は皆無です。高価な銀を除き、調理器具に使われる材質の中では、銅の熱伝導率が飛びぬけています。

なぜ炊飯器に熱伝導率の良さが大切なのか?
理由は2つ。

1つ目は炊き分け。火力の強弱で好みの食感に炊き分けが簡単にできるからです。炊飯は、開始から沸騰までの時間をどのぐらいにするかで炊き上がり・食感が大きく変化します。短い時間で素早く沸騰させたい場合は、熱伝導率の良い材質の鍋釜が必要です。

2つ目は熱ムラが少ない。熱伝導率が良い=熱が素早く伝わる。よって鍋全体に熱が回り加熱されます。直接火が当たっていない場所もしっかり熱くなるので、お米と水を均一に加熱することになり、ムラのない理想的な炊き上がりを実現します。熱伝導率が悪いと、火の当たっているところだけが加熱されやすく、鍋の場所によっては硬く炊けてしまったり柔らかく炊けてしまったりと、ムラが出てしまいます。

次に形状。側面から底面にかけてカーブしてなだらかに絞り込まれた「すり鉢」形状が熱対流を起しやすい。対流があるとお米の仕上がりもムラが出にくいのです。美味しくたけたごはんには「カニの穴」が開いています。これは対流の跡でムラなく炊けた証拠でもあります。鍋釜は深さも大切です。深さがあると、火を止めた後に大量の蒸気で効果的にお米を蒸らすことができます。

で、結果として何が一番なのかとなれば必然としてコレになります。
銅製の羽釜! COPPER HAGAMA RICE POT!
お米を炊くためだけに生まれてきた「孤高の存在」です。
この凛とした機能美の世界を篤とご堪能ください。Copper HAGAMA rice pot

やはり専用器はその存在感と潔よさが他とは違います。日本人の身体の中には、このシルエットを見ただけでお米が食べたくなるというDNAが、生まれながらに組み込まれています。※ちなみに銅製品は価格が高いので、コストを重視したい方はアルミ製の羽釜を使ってもOKです。

羽釜のサイズですが一般的に、口径16cmが3合炊き、18cmが5合炊きと考えて間違いありません。3合炊きサイズなら1.5~2.5合ぐらい、5合炊きサイズなら3~4合ぐらいが美味しく炊けます。蒸らす際の蒸気の容量も考えてMAXの量より少し減らして炊きましょう。また5合炊きの釜で1合しか炊かないとか、3合炊きの釜で1合未満の少量炊飯とかもお勧めできません。炊飯にはサイズに合った適量があります。炊飯釡については大は小を兼ねない、ということを認識しましょう。

 

美味しいごはんを炊くために、その5 
グラムで計量カップ単位の呪縛からの解放。

料理は食材をキッチンスケール(計量器)で測ってグラム単位で取り扱うのが一般的です。お米だけ古(いにしえ)の単位を使うのはなんとも不自然。他の食材と変わらずにグラムで量るのがごく自然です。実際にそちらのほうがいろいろと融通が利くし、計量カップ単位の呪縛からも解放され、任意の量に調整しやすいのです。

電気炊飯器だと、どうしても付属する計量カップと内釜のメモリのせいで、2合とか3合とか「合」単位に縛られがちです。しかしもっと柔軟に、各家庭の事情等に合わせて無駄なくジャストな容量で炊飯することが最も理想的です。

例えば我が家の炊飯量は1.5合だとやや少なく2合だとやや多い。本来はその中間がベストです。ところが従来の計量カップだとそれでは悩ましい。電気炊飯器では「1.67合」とか量ったりしません。でも、ガスコンロ+鍋釜の炊飯にして、お米の量をキッチンスケールで量れば「1.67合」ではなく「250g」という数字になります。このようにグラム数で調整すれば大変分かりやすく、より正確で、細かい調整も簡単にできます。ピッタリ必要な分だけ炊くというのは、かなりストレスフリーなことです。

 

美味しいごはんを炊くために、その6 
水と洗米方法について。

さて、無事に美味しい米を購入し、炊飯に適した熱伝導の良い鍋釜も用意して、炊飯したい最適な計量も済みました。そうなると次はいよいよ洗米です。

まずは洗米時の注意点から。お米は最初に触れた水から瞬時に水分を吸収します。乾いたスポンジだと思ってください。最初に吸収する水が肝心です。砥ぎ始めとなる最初の1回目の水には特に気を使いましょう。

水は必ず「軟水」を使って砥いだり炊いたりしましょう。水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量によって120mg/l以下を「軟水」、120mg/l以上を「硬水」と呼びます。大抵のスーパーでは容器を買えば無料で持ち帰ることのできるウォーターサーバーがありますから、それを使用すればお得です。水はとても大切です。結構味が変わりますから、こだわってみてください。 

 

洗米(研ぎ)、浸水(吸水)の時間

技術革新のおかげで最新精米プラントの優れた性能を享受できる現代社会では、昔のようにガシッガシッとお米を砥ぐ必要はありません。ボウルとザルを用意して手際よく、「濯ぐ/すすぐ」感じで洗米しましょう。今の時代、ガシガシ研ぐのは米割れの原因にしかなりませんのでご法度です。

浸水は気温や水温で差が顕著に出ます。夏は30分間。冬は1時間ほど浸水させます。ただし現代は蛇口からお湯が簡単に出る時代です。25度ぐらいの水温にすれば冬でも30分で問題ありません。賢く時短してください。米は十分な浸水により色が変わり、やや透き通った色から濁った白色になります。目視で判断しましょう。

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お米は一定の浸水時間が過ぎると飽和状態に達し、それ以上は吸水しません。2時間が飽和の目安となります。お米は冷蔵庫の中であれば1~2日浸水させたままでも問題ありません。朝出かける前に夕飯の分をまとめて洗米・浸水させておけば、夕食の準備は楽です。待つことなく炊飯作業に取り掛かるので、短時間で炊きたて御飯にありつけます。一人暮らしの方なら3回分ぐらいまとめて洗米・浸水させておけば、毎度の手間が省けることになります。

お米の浸水に使う容器は安いステンレス製のボウルで構いません。もしスイーツ作りが趣味の方で、無垢の銅製ボウルをお持ちであれば、それを浸水に使えば銅イオンの抗菌・殺菌の効果もあり、衛生面では最良。お勧めします。

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我が家では銅のボウルで浸水させています

 

ザル上げ吸水はしない。炊飯は浸水で使った水を使う。

ちなみに洗米(研ぎ・すずき)後、そのまま浸水せずザルあげして、お米の周りに付着した水だけで吸水させる方もいますが、寿司用の銀シャリとかに使わないかぎり、ザル上げはお勧めしません。銀シャリ用で炊くとしても濡れ布巾で覆うなどします。銀シャリは炊き上がった後にドバドバとお酢を振りかけるため、それを計算してやや硬めの炊き上りに調整するわけです。通常はお米を浸水させたままの状態で時間を待ちます。浸水が終わったらしっかり水切りして、釜に必要な分の水を張り、お米を入れてください。
炊飯で使う水は、お米を浸水させていた水を使います。

 

美味しいごはんを炊くために、その7 
水加減。体積比で1.4倍の水。

火力の強いガス炊飯では電気炊飯器より多めの水加減で炊きます。電気炊飯器はお米の体積に対して1.2倍の水加減になっていることが多いのですが、ガス炊飯の場合は1.35~1.4倍程度の水加減になるよう調整します(※ただしお米の状態によってケースバイケースです。新米を炊く場合は水を少なめにします。無洗米は水を多くします)。

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多めの水加減。ごはんの体積の1.4倍を基準にする。

炊飯と水加減と炊飯時間の表を用意しましたのでご参照ください。お米の量は洗米前の乾燥状態です。仮にお米250g(1段目の表のピンク色)を炊く場合、ガス炊飯では水の量は体積の1.4倍である420mlで炊けばよいことが2段目の表で分かります。ほんの少しだけ硬めですっきりした仕上がりにしたい場合は、1.35倍の405mlに水加減します。やや柔らかめが良い場合は1.45倍の435mlにします。

体積に定数をプラスして水加減を把握する方法(3段目の表)も用意しました。この方法は体積が増えるごとに一定の割合で定数も増加させます。概念としては解りにくいですが早見表としては切のよい数字になるので覚えやすくなっています。

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3段目の表のピンク色の部分を見てください。数字が「400」の枠です。
我が家では山形のつや姫を250g炊く場合、水を400ccにしています。既出のとおり銅釜+ガスコンロ炊飯では1.4倍の水加減を基準としますが、好みの食感を求めてほんのわずかですが1段下げて水加減を行っています。

新米の時期は、お米が水分をたくさん含んでいるので一段基準を下げます。380ccぐらいで炊きます。

我が家では250gのお米を炊く場合、加熱時間は10分間、蒸らしを8分間にして食べています。献立の内容によっては、加熱12分+蒸し9分ぐらいに調整することもあるし、酢飯などに作りたい場合は、やや火力を上げて炊飯時間を少し短くして、加熱9分+蒸し7分にするケースもあります。どんな品種のお米をどのような目的や献立で、どのような食感にしていくか、臨機応変に対処しています。

【注意】
表はあくまで目安として見てください。
これは我が家の以下の環境下における指標です。

・お米の品種(山形「つや姫」を使用(新米ではない)。
・1.5mm厚の純銅製羽釜を使用
・我が家のコンロで調理する
  (ハーマン製ビルトイン都市ガス13A・3口の標準コンロ 2.97kw使用)

材質や形状やサイズ、浸水時間、気温、水温、炊飯量、ガスコンロのメーカーやモデルによる火力の違い、好みの食感など個々それぞれで千差万別です。自分の環境下で最適の水加減や火加減を見つけてください。


お米は品種によって千差万別です。例えばアメリカのカリフォルニア産の輸入米などは、国産米よりさらに水を多くします。逆に、国産のモチモチ系の低アミロース米は少な目で炊きます。

山形県産「つや姫」250g:水 400CC
アメリカ産加州米 250g:水 430CC  輸入米は硬い食感なので水を多め
・ミルキークイーン 250g:水 380CC もちもち低アミロース米は水少なめ

ちなみにガスコンロの取説に記載されていた炊飯モードの指標では、1.5合で400ml、2合で500ml、3合で700mlの水量が目安となっていました。私の表と大差ないと思います。


美味しいごはんを炊くために、その8 
火加減と時間。

銅製の羽釜でガス炊飯を行う場合、火加減は基本的に一定です。シューシューと音を立て、少し吹きこぼれたりしてもそのまま放置。羽釜なら吹きこぼれても羽があるためガスバーナーの上に垂れることはありません。羽釡の隠れた利点です。

コンロの火加減は家庭用ガスコンロであれば「やや弱めの中火」が基本です。
(※我が家は10年選手のビルトインコンロの標準口2.97kw・都市ガス13A)

炊飯時間は、加熱時間「10分間」+蒸す時間「10分間」が基本です。
逆説的に言えば10分間加熱して水分が無くなる火加減に調節します。
炊飯とは、学問的な面から見ると「β状の生米(でんぷん)を加水分解してα化(糊化)する」ことであり、そのためには約20分程度の加熱が必要なのです。

 

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炊飯の量や火加減や水加減によって時間の長さは多少変わります。我が家は2合(300g)以下の量が多いので加熱10分+蒸らし8分で食べています。一人分しか炊かない少量炊飯の範疇ではやや時短となり、9分+7分の16分で充分に炊き上がります。

炊きこみご飯や鯛めしなど具材が入るケースでは、沸騰までの時間が長くなります。当然炊き上がりまでの全体の時間も長くなります。その場合は少しを火を強めに(やや強めの中火)に調整します。お米300g(2合)程度で具材を入れて炊く場合、火を消すまで5分前後長くかかります。

 

センサーを活用してカンタン炊飯

ガスコンロの火災防止センサーを利用して炊飯すると楽です。
スイッチオンしたらそのまま放置する方法です。
水分がなくなると鍋底の温度が急速に上がりセンサーが作動します。これがちょうど加熱が終わったサインとなりますので大変便利です。センサーが勝手に火を止めまてガスを供給しなくなりますので、この機能を使わない手はありません。やることは最初にコンロのスイッチを入れるだけですから、使うのは指一本。電気炊飯と変わらないほど楽です。タイマーで時間をいちいち計ったり、火を止める必要がありません。

ただしメーカーによってセンサー感度等の設定・性能はそれぞれ違うと思いますので、あくまで補助や時間把握の目安として利用、創意工夫してみてください。 

 

炊き分けは火加減ひとつで簡単に調整

火加減で、ご飯の炊き上がり具合をお好みに微調整できます。火をやや弱くして沸騰までの時間を長くすると、モッチリねっとり系に寄った炊き上がりになります。その反対に、火を強くしてあげると沸騰までの時間が短くなり、スッキリさっぱり系に寄った炊き上がりになります。つまり、水加減と火加減で複合的に炊き上がりを調節できるわけです。加熱時間は10分が基準ですが、火を弱めて15分ぐらいかけて炊いたり、火を強くして8分ぐらいで炊いたりすると食感が変化します。

好みの炊き上がりだけでなく、食事の献立を考えて炊き分けすると良いでしょう。
カレーライスや炒飯や手巻き寿司なら、火を少し強くして加熱時間を短くして、すっきりやや硬め。焼き魚やステーキなど汁気の少ないメニューなら、もっちり柔らかく。

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考察:「土鍋で炊くと美味しい」???

よくネット上で見聞しませんか?このセリフというか宣伝コピーというか…。
ここまで読んだ方は、もう理解できますよね。このセリフ、ややマユツバものです。土鍋は熱伝導率が極端に劣るため、沸騰までの時間がかかり過ぎてしまいます。素早く加熱してスッキリさっぱり1粒1粒しゃきっと立った炊き上げが出来ません。また炊飯専用にデザインされている形状以外の鍋は深さも不足しており、対流や蒸らしが得意ではありません。意図せず、ややべっちゃりのモチモチした炊き上がりになってしまいます。

それでも土鍋炊飯を美味しく感じる、ややべちゃモチ系の食感好きな人が少なくないのは、70年代後半あたりから電気炊飯器がマーケットを制覇し、生まれた時から電気炊飯器で炊いたごはんと共に育った人が多いからだと思います。電気炊飯器はそもそも火力が弱いので、沸騰まで時間をかけて炊くしかありません。そのため温度と時間の関係を表すグラフで見ると、土鍋と似たような炊飯特性を持つことになります。結果として両者は似たような炊き上がりになるわけです。だから電気炊飯器のごはんで育つと、土鍋で炊いたごはんが美味しく感じ易くなります。

お米の品種の偏りも影響しています。電気炊飯器の普及や食の変化と共に、それに適した品種であるモッチリ系のお米が幅を利かせました。一方ですっきり系品種は少なくなっています。実は1990年代初頭まで、日本人は「すっきり系」と「もちもち系」の品種を割と上手に食べ分けていました。もちもち代表がコシヒカリ、すっきり代表はササニシキ。平成の始めまでは両横綱として人気も作付けも二分していました。

しかし1993年に起きた記録的な冷夏(冷害)による平成の米騒動が、ササニシキの御膝元・宮城県の農家を直撃します。東北地方の被害は深刻でした。ササニシキは冷害に弱い品種だったので、宮城県の多くの農家が被害を受けてしまいました。育成に手間暇がかかり難しく、冷害や病気に弱く、収穫が安定しないササニシキは、翌年以降あっという間に「ひとめぼれ」へ転換されてしまい市場から淘汰されました。その後はコシヒカリ一強となり、他地区でもコシヒカリの後を追う系列のもっちり品種が市場を席巻し、現代に至ることとなりました。

最後に。献立の内容に合わせた炊き分けを

本来ご飯というのは、献立の内容や季節に合わせて、適した品種を用意して、その特徴をちゃんと引き出せるような方法で炊くのが正しいのです。握り・手巻き・ちらしの各種お寿司には、モチモチ系の品種は合いません。それを土鍋で炊くなんて愚の骨頂です。吸い物、椀物(煮物椀)、蒸し物、酢の物、汁物など、汁気の多い献立が並ぶ和食にも適していません。どのような献立かによって、お米もモチモチ系が合うか、さっぱり系が合うか、それに適した米と炊き方で炊き分けることが大切です。

現代の家庭ではカマドを設置するのは非現実的です。しかしカマド程までいかなくとも、強い火力で美味しくごはんを炊き上げることは不可能ではありません。それを簡単に実現できるのがガスコンロと熱伝導率の良い銅の羽釜のコンボです。
機会があればぜひ、今回書き記した極意を元にご飯を炊いてみてください。

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炊き立てご飯はお櫃へ。余分な水分を吸って米の食感が増す。冷ご飯の美味しさは奇跡的。


以上、銅の羽釜による炊飯方法となります。お米の品種、好みの食感、水温、気温、コンロメーカーによって火力などの環境は様々違いますから、あくまで目安として参考にして色々とチャレンジしてください。