レアなストウブ パンプキンココット バジルグリーン 24cm / Staub Pumpkin Cocotte 3.5qt Basil カボチャのココット
カボチャ型のSTAUB/ストウブがやってきた
こちらは最近我が家に導入された2つ目となるストウブ。蓋に真鍮のノブが付いたカボチャの形をした緑色の鋳鉄製ホーロー鍋です。
※価格:23,800円 (定価:税込 / ストウブショップにて購入)
ストウブ・パンプキンココット・バジルグリーン・24cm
フランス語の正式名称は Staub Cocotte Citrouille Ronde 24cm Basilic-SC。
ストウブの鍋は丸いラウンド型か楕円のオーバル型が主流ですが、変り種や限定色の鍋も販売しています。今回はその変り種の1つでもあるパンプキン型のココット、しかも米国の調理器具販売「ウィリアズムソノマ」限定カラーである緑のパンプキンココットを選びました。
見た目で選んで大丈夫?
何故このモデルにしたかといえば、ズバリその見た目。
似たようなホーロー製品が他のブランドからも販売されていますが、材質の特性は変わりません。特別なオプション機能が追加装備されているわけでもありません。大同小異の世界です。であれば、好きなブランドであるとか、他人とはちょっと違うものが良いとか、見た目の良いもの、好きな色だとかでチョイスするに越したことはありません。
ラインナップとその推移はやや複雑
ストウブのパンプキンココットは、特殊なココットの製品群としては種類が豊富に展開されている人気モデルです。サイズは直径が28cmの5-Quartと24cmの3.5-Quartの2種類が用意されています。
色は、これまでに限定製品などを含めて全6色が販売されてきました。グラデーションが綺麗な明るいオレンジ、発色の良い鮮やかなオレンジ、現在のメインカラーであるシナモン、近年限定復刻色として展開されたホワイト、定番人気カラー版のブラック、そして米国ウィリアムズソノマ限定のバジルグリーン。
サイズによって色の有無があったり、既に廃番カラーも有ります。
やや複雑なので、図で解りやすいように整理してみました。
現在、日本のストウブ公式サイトでは、基本色となるシナモンとブラックの24cmサイズの2点が取扱いされています。
※2016年に限定復刻したピュアホワイトシリーズの製品群にも24cmのパンプキンがラインナップされ正規で直営店を通じて販売されました。アメリカではホワイトも限定ではなく通常販売しています。
メインカラーは変遷があり、旧オレンジ(グラデーション)→新オレンジ→深みのあるシナモン(海外ではBurnt Orangeと呼ばれる)へと変更。また28cmの大型サイズについては、現在日本のストウブでは正規品としての扱いはありません。
レアアイテム? 珍しいバジルグリーンが日本で買える?
図のとおりパンプキンココットは延べ10種類が存在しています。この中で比較的レアなのが、今回我が家にやってきた、米国ウィリアムズソノマ限定販売のバジルグリーンのパンプキンココットです。
ストウブとウイリアムズソノマ社のコラボ品なので、同社の実店舗での取扱いが基本となります。ウイリアムズソノマのオンラインショップでも、実際に来店して商品を引き取るお店を指定したうえでしか決済できません。
感謝祭やクリスマスのシーズン前あたりから販売開始となり、数量も限定なので無くなり次第終了です。毎年同じものを販売しているわけでもありません。昔販売された5qtモデルのバジルグリーンはすぐに売り切れてしまい、現在はオークションサイトで高値取引され、レアアイテムと化しています。現在販売中の3.5qtモデルもウィリアムズソノマのサイトでほぼ売り切れに近い状態です。
(日本ではアウトレット品として2018年の年末あたりからストウブのお店で販売しましたが数量は少なく限られているようです。※ヤフオクやメルカリで高額転売しようとしているボッタクリ出品者にご用心!ストウブのショップで価格23,800円で購入できます)
これはパンプキン?それともカボチャ?
ハロウィンの時期になると店舗の装飾や広告でよく見かけるのがオレンジ色のカボチャ。あれは正式には英語でPumpkin / パンプキンといいます。見た目はカボチャと似たようなものですが実際は色々と違うというか。単なる色違いではありません。
日本のスーパーでよく見かける緑色のカボチャは、英語圏ではSquash(スカッシュ/スクゥアッシュ)と呼ばれています。近年は日本の野菜も市民権を獲得しているのか「KABOCHA Squash」などと表示されることもあります。日本の野菜といいましたが、日本のスーパーで売っているカボチャは元々舶来品の西洋カボチャで、江戸末期から明治に入ってきまたものです。皮の硬い日本カボチャもありますが最近は殆ど見かけません。ちなみに日本カボチャも元々は16世紀ごろカンボジアから伝来した舶来品です。
フランスではオレンジのパンプキンはCitrouille(シトルイユ)とPotiron(ポティロン)に分類されます。緑のカボチャは色々と呼び名があるようですが、カボチャだったり、ポティロン・ヴェール・ジャポネだったり、ホッカイドウなんて単語が付く呼び名もあるようです。簡単に分けると以下のようなことになります。
ということで、緑のカボチャはどこへ行こうと基本的に「KABOCHA」ということで、緑のパンプキンココットもカボチャココットと呼びたい気分です。
パンプキンココットならではの良し悪し
さて、この製品ならではの良し悪しにも言及しておきたいと思います。
【良い点】
秀逸なデザイン。
キッチンに放置しても出しっぱなし感がありません。
食材を入れるサーブ用ポットとして堂々とテーブルセンターに飾れるほどのルックスを持っています。蓋の真鍮の造作と鈍い輝きがなんとも言えません。
大きさと形状。
24cm/3.5Qtのサイズは汎用性が高く、深さも9.5cmと浅すぎず深すぎず、多様性があります。側面は蓋から底にかけて緩やかな絞りがあり、対流しやすい形状になっていますので、煮込み料理・炊きこみ料理がよりムラなく仕上がります。
【良くない点】
蓋のつまみ
ツルの形をした蓋のつまみが機能的に良くありません。
やや短くて、根元に行くに従って太くなるのでしっかり握れません。人間の性なのか、左下の写真のように指にかけてひょいと持ち上げる動作をやってしまいます。フタが閉まっている時は指が掛かりやすい角度なのですが、いざ蓋を持ち上げると重心バランスが変わってしまうので、どうしてもスルリと滑って指から抜けやすい角度になってしまいます。
写真右上のように蓋を落としてしまう可能性があります。洗剤を使って洗いものをしている最中は特に滑るので注意が必要です。できれば下の写真のように形状を改善して、重心も少しずらしてくれることを望みます。
ちなみに調理中の場合は、つまみ部分が高温になるので、必然としてミトン(鍋つかみ)を使うことになるため、左程気になりません。
ストウブの特性を知る
ストウブの特性もおさらいしておきます。ストウブはやや熱伝導率が悪いという特性があります。熱伝導率とは解りやすく言うと熱の伝わる早さ・伝わり易さのことです。
熱伝導率の良いものとして銅やアルミの調理器具が挙げられます。特に銅は熱伝導率が良く、動物で例えるなら足の速いチーターのようです。コンロの火にかけると瞬時に熱が鍋全体に伝わり、均一に熱くなります。この性質は調理において大変有利に働きます。温まりやすいだけでなく冷めやすいという反面も持ちますが、この点についても有効で、ガスの火の強弱で簡単に反応して、温度管理がしやすくなります。
一方、鋳鉄は熱伝導率が良くないので温まるまで時間がかかります。ぶ厚い作りも大きく影響しています。しかしその厚み故に熱のあたりがマイルドで、食材が焦げ付きにくい利点もあります。また比熱と質量のおかけで蓄熱性・保温性に優れます。熱伝導の良い銅製の鍋がチーターなら、鋳鉄製の鍋は足こそ早くないけどゆっくりと長い距離を移動できる象さんみたいな存在です。ストウブは蓋が重く比較的密閉性も高いので、蒸し煮や、じっくりコトコト系の調理に向きます。
IHでは有利となる鋳鉄製の鍋
熱源によっては鋳鉄製であることが利点となる場合もあります。
熱源がIHクッキングヒーターの場合、鉄製の鍋は効率よく加熱できますので有利です。普通のIHヒーターでは銅やアルミは使えません。オールメタル対応のIHヒーターもありますが、銅やアルミ鍋は効率が悪く、本来の性能を発揮できません。
近年のストウブ人気は、IHクッキングヒーターの普及と、鍋の原材料である鉄との相性によるところが大きいと思います。
焦げ付きにくいマットエマイユ加工
ストウブは鍋の内側に、ざらざらした黒マットエマイユ加工が施されています。油なじみがよく、食材が焦げ付きにくいメリットがあります。
本家公式サイトでも、ご自慢のセールスポイントとして高らかに謳っています。ストウブ製品を紹介する数多のショッピングサイトでも、マニアのブログでも、購入した方々の報告でも、みな一様に利点として挙げています。
しかし本当でしょうか?
答えはYES、本当です。誇大広告の疑いなど一切ありません。実際に使えばそのことがよくわかります。ざらざらとした鍋肌は間違いなく油馴染みが良く、食材も張り付きにくい。鍋底もぶ厚いため焦げ付きにくい。確かにメーカーやみなさんがおっしゃる通りの性能を如何なく発揮してくれます。
諸刃の剣となるその性能
しかし、その素晴らしい性能が時として妨げになることが…。
どいういうことかといえば以下のとおり。
「焦げ付きにくい」と「美味しい料理」はイコール・同義語ではない。
そもそも調理の目的はどこにあるのか?
答えは簡単、美味しい料理を作ることです。
これが本来の目的です。調理とは決して好きな鍋の性能を確認する作業ではありません。あくまでプライオリティーは「美味しい食事 > 鍋の性能」です。
鍋底にこびり付いた肉汁、鍋の内側に張り付いて残った乾燥したソースの跡。料理では、そういったものが美味しい旨みの源であることが多いのです。例えばステーキ肉をスキレットで焼き、その肉に合うソースを作りたい場合、スキレットの鍋底に残ったスュックをワイン等でデグラッセする手法がよく使われます。
※スュック: メイラード反応によって鍋底に張り付いた焦げ・旨み
※デグラッセ:鍋に張り付いたスュックを水分(ワイン/水/スープ等)で煮溶かし旨みを回収すること
難しそうなフレンチの用語なんか使わなくても、日本の家庭だってハンバーグを焼いた後に、フライパンに残った肉汁を利用してコクや旨みのあるソースを作ったりしますよね。
そう、大切なのはそこなのです。
焦げついてナンボ、こびり付いてナンボな時が調理にはあるわけです。
洋食をよく作る方ならその辺のことはお分かりだと思います。
ストウブも、肉を焼いたりする作業では高い温度を保持してあげることで、まずまず良い具合なのですが、実はメインの使い方である煮込み調理の場合に難しさが顔を出してきます。
旨みの素が鍋の内側に付着しない
シチューなど煮込み料理やパスタソースを作っていると、水分が減ったり、混ぜた時の汁が側面に付着して、その汁跡が熱によって乾燥し、側面に濃縮されて硬くこびりついていきます。それが大切な旨みの素になります。それをこそげ落としてソースの中に戻すことでコクや風味が増します。また、それをしないと本当に美味しいシチューもソースもできません。
ところがストウブの場合、基本的に蓋をして蒸気と共に調理することに加え、内側のマットエマイユ加工の性能が嘘偽りなく良過ぎるおかげで、汁跡が側面になかなか付着/乾燥せずこびり付いてくれません。
また、密閉性と蓄熱性を活かした「弱火」調理が前提の使用方法もあり、より一層鍋肌へのこびり付き難さに拍車をかけます。そうなると、食材を煮込む性能はとても良いのに、何故か出来上がったものは風味(味の深みやコク)がいまひとつ、なんてことになってしまいます。
ビーフシチューやカレーやミートソースなどコクを出したい料理では、この点を踏まえたうえで、蓋の有無、火加減など、上手に調整して料理を仕上げるテクニックが必要となり、実は扱いの難しい鍋だと思います。
「蓋して待てばあっという間に美味しいシチューが勝手に出来てしまうんです」なんてのんきな購入レポをたまに見かけますが、かなりマユツバものです。煮込み料理を上手に仕上げるにはそこそこテクを使う必要がある上級者向けの鍋、それがストウブです。
カレーやシチューを入れっぱなしでOKの鍋を探して
今回のストウブ購入のきっかけは、カスタードクリームを作った時の失態でした。その日はつい面倒くさがって、出来上がったカスタードクリームを容器に移さず、そのまま銅ポエロンごと冷蔵庫で冷やすという「暴挙」に出てしまいました。
翌日すっかり冷えたカスタードをいざ食べて見たら、キツい金属臭と苦い味が移ってしまい、全て捨てる羽目に。その時に「料理入れっぱなしOKの鍋でも少し揃えておくべきか」との考えがフツフツと沸いてきました。
我が家は年中カレーを作るのですが、冬場になると、そこへシチュー類が加わります。トマト系、デシャメル・ホワイト系、デミグラ系、具材も肉からシーフードまで色々。さらに寄せ鍋、水炊きなど和食系の各種お鍋料理、しゃぶしゃぶ、おでん迄、もう百花繚乱状態。毎日つづく?ぐらいに煮込み&鍋料理の比重が増えてきます。
冬場なら鍋に入れっぱなしのまま一晩ぐらい放置しても食材が痛んだり腐ったりしないし、どうせ次の日の朝や昼に食べきってしまうので、ズボラに「明日まで鍋に入れっぱなし」作戦を遂行したくなります。
そこで「ホーロー加工なら入れっぱなしでも金気とか移らないよな…よしっ」と相成りまして、ようやく重い腰を上げ、2個目となるストウブの導入になりました。
ストウブは色選びが醍醐味だけど、悩んでしまい踏み出せない
実は、1つ目のストウブも今回の2つ目も「よし買うぞっ」と決めてから実際に導入するまで、割と長い期間を要しました。というのも優柔不断で悩んでしまい、なかなか決断ができなかったからでした。
優柔不断の原因はハッキリしています。それは「色」です。
ストウブは結構な数のラインナップ(形とサイズ)に加えて、限定を含む豊富な色ぞろえがあるため、ついつい迷ってしまうのです。
ホーロー鍋は色選びが醍醐味であり、大きな愉悦の1つでもあります。
ストウブをいくつも所有するマニアやコレクターの方なら「あら、いい色ね」「とりあえず1個キープ」なんて軽い感じで躊躇わず購入するのだと思いますが、こちとらストウブの素人さんです。シャレオツとは程遠いキッチン環境の中、やたらと金属鍋ばかりを買ってきた人生です。したがって色の選択肢という概念すらありません。鉄は黒、アルミとステンは銀、銅は茶色と決まってます。
鍋の色? 何ソレ? ってなものです。
そうなると素人勢は、綺麗な色とりどりの鍋を見ては、ネット上をウロウロと行ったり来たりする迷子さんになっていくわけです。
迷わず行けよ、行けばわかるさ、イチニーサン、ダーッ!
結構前になりますが、買う寸前まで悩んだ色がありました。「アボカド」という黄緑色の限定カラーのココットでした。ヒュージャックマンが英語verの "あの素晴しい愛をもう一度" を歌った若草色のトヨタ・クラウンのCMを彷彿とさせる綺麗な色でした。
こんな色の鍋だったら欲しいなぁ、と思ったのです。
もともと「限定」という言葉にめっぽう弱い性質なのでポチっとする寸前でしたが、何故か手にすることはありませんでした。他のものが欲しくて後回しにしたのか、今となっては記憶も定かではありません。
小さいサイズで良いから1個買っておけば良かったなと、今でも少し後悔もしています。そんなこんなで今回は後悔しないよう、このカボチャのココットをガシッと両手で抑え込み、A猪木のあの言葉を心の中で叫ぶのでした。
迷わず行けよ、行けばわかるさ、1、2、3、ダーッ!