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徒然なるままに

美味しいご飯の炊き方 ( 羽釜でご飯を炊く方法) ガスコンロでご飯を炊く ( 銅の羽釜編)

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美味しいごはんを炊くために、その1 
ガス炊飯で炊く。

美味しいご飯を食べたいならガス炊飯がお勧め。電気炊飯器とガス炊飯の大きな違いはズバリ「火力」。炊飯時の水分蒸発量が電気炊飯器の場合で6~10%、ガス炊飯器は13~15%と言われています。極端に表現すると「少なめの水でちまちまと時間かけて温度を上げて炊く」vs「多めの水を高火力でガンガン沸騰・対流・蒸発させて炊く」という違いです。いつの時代も、昔ながらのかまど炊きごはんが結局のところ一番美味しいといわれますが、それは強大な火力のおかげです。電気炊飯器メーカーが莫大な開発費を投じて目指しているのも「かまど炊き」の味。だったら最初から火力の強いコンロ直火で炊けば話はカンタンです。

美味しいごはんを炊くために、その2 
4つの基本を理解する。

炊飯の極意は4つ。

1) 米
美味しい米を知り、その品種に適した方法で炊く。

2) 水
水質、洗米方法、浸水時間、水加減を正しく行う

3) 加熱時間
「鍋の中が沸騰するまでの時間」
「沸騰を保っている時間」
「蒸らしている時間」
以上、各3つの段階での火加減・時間調整を正しく行う。

4) 調理器具
お米をムラなく均一に加熱し、適切に蒸らすことができる炊飯器具を使う。

美味しいごはんを炊くために、その3 
美味しい米を知る。

以下の4つの項目の中で、美味しいご飯を食べるための一番大切な事項を1つ選ぶとしたらどれでしょうか? 

・1. 精米したてのお米を炊く
・2. 美味しいお米を買う
・3. 最新の高い炊飯器を購入する
・4. 炊飯器のサイズに適した量で炊く

こたえはカンタン。正解は2番目の「美味しいお米を買う」です。
これについては「味」そのものが違うのですから仕方ありません。
神戸ビーフ」や「松阪牛」や「佐賀牛」が美味しいのと一緒です。
大前提の基本は間違えてはいけません。

 

米の食味ランキング

美味しいごはんを食べたいのであれば、「美味しいお米とは何か」を定義しなければなりません。しかし味覚や好みは千差万別。ですから1971年から食味試験を行っている日本穀物検定協会の「米の食味ランキング」を見るのが手っ取り早く公正です。

ランキング試験|食味試験|日本穀物検定協会

日本穀物検定協会は以下の3つの試験を実施しています。
・官能試験
・理化試験
・ランキング試験

このランキングは毎年発表されるので、それを見てお米を購入すれば、ほぼ間違いなしです。この味覚ランクで「特A」であれば美味しいお米ということになります。その中から好みのものを選べば問題ありません。お米は、アミロース含有量の高低により、 すっきり系 or もちもち系に大別できます。

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美味しいお米を買うことが一番大切

我が家のお気に入りは山形産「つや姫」。ほぼスタメンで常備してます。青森の「青天の霹靂」もなかなか美味しいです。

ここ最近のランキングで象徴的だった出来事は、長年にわたって美味しいお米の代名詞だった新潟の「こしひかり」が2018年に特Aから落ちたこと。2019年の2月発表のランキングで返り咲きましたが、全国にブランド米が増えて、一強の時代は過去のものになりました。時代は変わります。

 

精米や保存にこだわってみる

精米にもこだわるとより美味しいごはんが炊けます。食す直前に玄米を精米するのが一番良い方法です。しかし誰もが精米機を持っているわけではありません。その場合は、できる限り精米日の浅いものをチョイス。

お米の扱いは生鮮食品と一緒です。購入したお米は冷蔵庫に保管を。近年では、最初に荒く精米して1日寝かせた後に精米する「24時間熟成米」や、玄米を氷温域で長期間寝かせる「氷温熟成米」などもあり、いろいろと工夫したお米の保存法も発達しています。自分が出来る範囲で新鮮さを保ち、旨みを減らさないor増す工夫をして保存・精米するとよい。

 

美味しいごはんを炊くために、その4 
正しい鍋釜を選ぶ。

鍋釜は、材質と形状と容量(サイズ)が大切です。
まずは材質。熱が伝わる早さの指標の熱伝導率から見てみましょう。

銀 420
銅 398
金 320
アルミ 236
真鍮 106
鉄 84
ステンレス/クローム系 26
チタン 22
陶器 1~1.6

一目瞭然です。科学を前に、偽りの宣伝、プラシーボ効果、オカルト的妄想の類が入り込む余地は皆無です。高価な銀を除き、調理器具に使われる材質の中では、銅の熱伝導率が飛びぬけています。

なぜ炊飯器に熱伝導率の良さが大切なのか?
理由は2つ。

1つ目は炊き分け。火力の強弱で好みの食感に炊き分けが簡単にできるからです。炊飯は、開始から沸騰までの時間をどのぐらいにするかで炊き上がり・食感が大きく変化します。短い時間で素早く沸騰させたい場合は、熱伝導率の良い材質の鍋釜が必要です。

2つ目は熱ムラが少ない。熱伝導率が良い=熱が素早く伝わる。よって鍋全体に熱が回り加熱されます。直接火が当たっていない場所もしっかり熱くなるので、お米と水を均一に加熱することになり、ムラのない理想的な炊き上がりを実現します。熱伝導率が悪いと、火の当たっているところだけが加熱されやすく、鍋の場所によっては硬く炊けてしまったり柔らかく炊けてしまったりと、ムラが出てしまいます。

次に形状。側面から底面にかけてカーブしてなだらかに絞り込まれた「すり鉢」形状が熱対流を起しやすい。対流があるとお米の仕上がりもムラが出にくいのです。美味しくたけたごはんには「カニの穴」が開いています。これは対流の跡でムラなく炊けた証拠でもあります。鍋釜は深さも大切です。深さがあると、火を止めた後に大量の蒸気で効果的にお米を蒸らすことができます。

で、結果として何が一番なのかとなれば必然としてコレになります。
銅製の羽釜! COPPER HAGAMA RICE POT!
お米を炊くためだけに生まれてきた「孤高の存在」です。
この凛とした機能美の世界を篤とご堪能ください。Copper HAGAMA rice pot

やはり専用器はその存在感と潔よさが他とは違います。日本人の身体の中には、このシルエットを見ただけでお米が食べたくなるというDNAが、生まれながらに組み込まれています。※ちなみに銅製品は価格が高いので、コストを重視したい方はアルミ製の羽釜を使ってもOKです。

羽釜のサイズですが一般的に、口径16cmが3合炊き、18cmが5合炊きと考えて間違いありません。3合炊きサイズなら1.5~2.5合ぐらい、5合炊きサイズなら3~4合ぐらいが美味しく炊けます。蒸らす際の蒸気の容量も考えてMAXの量より少し減らして炊きましょう。また5合炊きの釜で1合しか炊かないとか、3合炊きの釜で1合未満の少量炊飯とかもお勧めできません。炊飯にはサイズに合った適量があります。炊飯釡については大は小を兼ねない、ということを認識しましょう。

 

美味しいごはんを炊くために、その5 
グラムで計量カップ単位の呪縛からの解放。

料理は食材をキッチンスケール(計量器)で測ってグラム単位で取り扱うのが一般的です。お米だけ古(いにしえ)の単位を使うのはなんとも不自然。他の食材と変わらずにグラムで量るのがごく自然です。実際にそちらのほうがいろいろと融通が利くし、計量カップ単位の呪縛からも解放され、任意の量に調整しやすいのです。

電気炊飯器だと、どうしても付属する計量カップと内釜のメモリのせいで、2合とか3合とか「合」単位に縛られがちです。しかしもっと柔軟に、各家庭の事情等に合わせて無駄なくジャストな容量で炊飯することが最も理想的です。

例えば我が家の炊飯量は1.5合だとやや少なく2合だとやや多い。本来はその中間がベストです。ところが従来の計量カップだとそれでは悩ましい。電気炊飯器では「1.67合」とか量ったりしません。でも、ガスコンロ+鍋釜の炊飯にして、お米の量をキッチンスケールで量れば「1.67合」ではなく「250g」という数字になります。このようにグラム数で調整すれば大変分かりやすく、より正確で、細かい調整も簡単にできます。ピッタリ必要な分だけ炊くというのは、かなりストレスフリーなことです。

 

美味しいごはんを炊くために、その6 
水と洗米方法について。

さて、無事に美味しい米を購入し、炊飯に適した熱伝導の良い鍋釜も用意して、炊飯したい最適な計量も済みました。そうなると次はいよいよ洗米です。

まずは洗米時の注意点から。お米は最初に触れた水から瞬時に水分を吸収します。乾いたスポンジだと思ってください。最初に吸収する水が肝心です。砥ぎ始めとなる最初の1回目の水には特に気を使いましょう。

水は必ず「軟水」を使って砥いだり炊いたりしましょう。水1000ml中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量によって120mg/l以下を「軟水」、120mg/l以上を「硬水」と呼びます。大抵のスーパーでは容器を買えば無料で持ち帰ることのできるウォーターサーバーがありますから、それを使用すればお得です。水はとても大切です。結構味が変わりますから、こだわってみてください。 

 

洗米(研ぎ)、浸水(吸水)の時間

技術革新のおかげで最新精米プラントの優れた性能を享受できる現代社会では、昔のようにガシッガシッとお米を砥ぐ必要はありません。ボウルとザルを用意して手際よく、「濯ぐ/すすぐ」感じで洗米しましょう。今の時代、ガシガシ研ぐのは米割れの原因にしかなりませんのでご法度です。

浸水は気温や水温で差が顕著に出ます。夏は30分間。冬は1時間ほど浸水させます。ただし現代は蛇口からお湯が簡単に出る時代です。25度ぐらいの水温にすれば冬でも30分で問題ありません。賢く時短してください。米は十分な浸水により色が変わり、やや透き通った色から濁った白色になります。目視で判断しましょう。

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お米は一定の浸水時間が過ぎると飽和状態に達し、それ以上は吸水しません。2時間が飽和の目安となります。お米は冷蔵庫の中であれば1~2日浸水させたままでも問題ありません。朝出かける前に夕飯の分をまとめて洗米・浸水させておけば、夕食の準備は楽です。待つことなく炊飯作業に取り掛かるので、短時間で炊きたて御飯にありつけます。一人暮らしの方なら3回分ぐらいまとめて洗米・浸水させておけば、毎度の手間が省けることになります。

お米の浸水に使う容器は安いステンレス製のボウルで構いません。もしスイーツ作りが趣味の方で、無垢の銅製ボウルをお持ちであれば、それを浸水に使えば銅イオンの抗菌・殺菌の効果もあり、衛生面では最良。お勧めします。

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我が家では銅のボウルで浸水させています

 

ザル上げ吸水はしない。炊飯は浸水で使った水を使う。

ちなみに洗米(研ぎ・すずき)後、そのまま浸水せずザルあげして、お米の周りに付着した水だけで吸水させる方もいますが、寿司用の銀シャリとかに使わないかぎり、ザル上げはお勧めしません。銀シャリ用で炊くとしても濡れ布巾で覆うなどします。銀シャリは炊き上がった後にドバドバとお酢を振りかけるため、それを計算してやや硬めの炊き上りに調整するわけです。通常はお米を浸水させたままの状態で時間を待ちます。浸水が終わったらしっかり水切りして、釜に必要な分の水を張り、お米を入れてください。
炊飯で使う水は、お米を浸水させていた水を使います。

 

美味しいごはんを炊くために、その7 
水加減。体積比で1.4倍の水。

火力の強いガス炊飯では電気炊飯器より多めの水加減で炊きます。電気炊飯器はお米の体積に対して1.2倍の水加減になっていることが多いのですが、ガス炊飯の場合は1.35~1.4倍程度の水加減になるよう調整します(※ただしお米の状態によってケースバイケースです。新米を炊く場合は水を少なめにします。無洗米は水を多くします)。

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多めの水加減。ごはんの体積の1.4倍を基準にする。

炊飯と水加減と炊飯時間の表を用意しましたのでご参照ください。お米の量は洗米前の乾燥状態です。仮にお米250g(1段目の表のピンク色)を炊く場合、ガス炊飯では水の量は体積の1.4倍である420mlで炊けばよいことが2段目の表で分かります。ほんの少しだけ硬めですっきりした仕上がりにしたい場合は、1.35倍の405mlに水加減します。やや柔らかめが良い場合は1.45倍の435mlにします。

体積に定数をプラスして水加減を把握する方法(3段目の表)も用意しました。この方法は体積が増えるごとに一定の割合で定数も増加させます。概念としては解りにくいですが早見表としては切のよい数字になるので覚えやすくなっています。

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3段目の表のピンク色の部分を見てください。数字が「400」の枠です。
我が家では山形のつや姫を250g炊く場合、水を400ccにしています。既出のとおり銅釜+ガスコンロ炊飯では1.4倍の水加減を基準としますが、好みの食感を求めてほんのわずかですが1段下げて水加減を行っています。

新米の時期は、お米が水分をたくさん含んでいるので一段基準を下げます。380ccぐらいで炊きます。

我が家では250gのお米を炊く場合、加熱時間は10分間、蒸らしを8分間にして食べています。献立の内容によっては、加熱12分+蒸し9分ぐらいに調整することもあるし、酢飯などに作りたい場合は、やや火力を上げて炊飯時間を少し短くして、加熱9分+蒸し7分にするケースもあります。どんな品種のお米をどのような目的や献立で、どのような食感にしていくか、臨機応変に対処しています。

【注意】
表はあくまで目安として見てください。
これは我が家の以下の環境下における指標です。

・お米の品種(山形「つや姫」を使用(新米ではない)。
・1.5mm厚の純銅製羽釜を使用
・我が家のコンロで調理する
  (ハーマン製ビルトイン都市ガス13A・3口の標準コンロ 2.97kw使用)

材質や形状やサイズ、浸水時間、気温、水温、炊飯量、ガスコンロのメーカーやモデルによる火力の違い、好みの食感など個々それぞれで千差万別です。自分の環境下で最適の水加減や火加減を見つけてください。


お米は品種によって千差万別です。例えばアメリカのカリフォルニア産の輸入米などは、国産米よりさらに水を多くします。逆に、国産のモチモチ系の低アミロース米は少な目で炊きます。

山形県産「つや姫」250g:水 400CC
アメリカ産加州米 250g:水 430CC  輸入米は硬い食感なので水を多め
・ミルキークイーン 250g:水 380CC もちもち低アミロース米は水少なめ

ちなみにガスコンロの取説に記載されていた炊飯モードの指標では、1.5合で400ml、2合で500ml、3合で700mlの水量が目安となっていました。私の表と大差ないと思います。


美味しいごはんを炊くために、その8 
火加減と時間。

銅製の羽釜でガス炊飯を行う場合、火加減は基本的に一定です。シューシューと音を立て、少し吹きこぼれたりしてもそのまま放置。羽釜なら吹きこぼれても羽があるためガスバーナーの上に垂れることはありません。羽釡の隠れた利点です。

コンロの火加減は家庭用ガスコンロであれば「やや弱めの中火」が基本です。
(※我が家は10年選手のビルトインコンロの標準口2.97kw・都市ガス13A)

炊飯時間は、加熱時間「10分間」+蒸す時間「10分間」が基本です。
逆説的に言えば10分間加熱して水分が無くなる火加減に調節します。
炊飯とは、学問的な面から見ると「β状の生米(でんぷん)を加水分解してα化(糊化)する」ことであり、そのためには約20分程度の加熱が必要なのです。

 

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炊飯の量や火加減や水加減によって時間の長さは多少変わります。我が家は2合(300g)以下の量が多いので加熱10分+蒸らし8分で食べています。一人分しか炊かない少量炊飯の範疇ではやや時短となり、9分+7分の16分で充分に炊き上がります。

炊きこみご飯や鯛めしなど具材が入るケースでは、沸騰までの時間が長くなります。当然炊き上がりまでの全体の時間も長くなります。その場合は少しを火を強めに(やや強めの中火)に調整します。お米300g(2合)程度で具材を入れて炊く場合、火を消すまで5分前後長くかかります。

 

センサーを活用してカンタン炊飯

ガスコンロの火災防止センサーを利用して炊飯すると楽です。
スイッチオンしたらそのまま放置する方法です。
水分がなくなると鍋底の温度が急速に上がりセンサーが作動します。これがちょうど加熱が終わったサインとなりますので大変便利です。センサーが勝手に火を止めまてガスを供給しなくなりますので、この機能を使わない手はありません。やることは最初にコンロのスイッチを入れるだけですから、使うのは指一本。電気炊飯と変わらないほど楽です。タイマーで時間をいちいち計ったり、火を止める必要がありません。

ただしメーカーによってセンサー感度等の設定・性能はそれぞれ違うと思いますので、あくまで補助や時間把握の目安として利用、創意工夫してみてください。 

 

炊き分けは火加減ひとつで簡単に調整

火加減で、ご飯の炊き上がり具合をお好みに微調整できます。火をやや弱くして沸騰までの時間を長くすると、モッチリねっとり系に寄った炊き上がりになります。その反対に、火を強くしてあげると沸騰までの時間が短くなり、スッキリさっぱり系に寄った炊き上がりになります。つまり、水加減と火加減で複合的に炊き上がりを調節できるわけです。加熱時間は10分が基準ですが、火を弱めて15分ぐらいかけて炊いたり、火を強くして8分ぐらいで炊いたりすると食感が変化します。

好みの炊き上がりだけでなく、食事の献立を考えて炊き分けすると良いでしょう。
カレーライスや炒飯や手巻き寿司なら、火を少し強くして加熱時間を短くして、すっきりやや硬め。焼き魚やステーキなど汁気の少ないメニューなら、もっちり柔らかく。

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考察:「土鍋で炊くと美味しい」???

よくネット上で見聞しませんか?このセリフというか宣伝コピーというか…。
ここまで読んだ方は、もう理解できますよね。このセリフ、ややマユツバものです。土鍋は熱伝導率が極端に劣るため、沸騰までの時間がかかり過ぎてしまいます。素早く加熱してスッキリさっぱり1粒1粒しゃきっと立った炊き上げが出来ません。また炊飯専用にデザインされている形状以外の鍋は深さも不足しており、対流や蒸らしが得意ではありません。意図せず、ややべっちゃりのモチモチした炊き上がりになってしまいます。

それでも土鍋炊飯を美味しく感じる、ややべちゃモチ系の食感好きな人が少なくないのは、70年代後半あたりから電気炊飯器がマーケットを制覇し、生まれた時から電気炊飯器で炊いたごはんと共に育った人が多いからだと思います。電気炊飯器はそもそも火力が弱いので、沸騰まで時間をかけて炊くしかありません。そのため温度と時間の関係を表すグラフで見ると、土鍋と似たような炊飯特性を持つことになります。結果として両者は似たような炊き上がりになるわけです。だから電気炊飯器のごはんで育つと、土鍋で炊いたごはんが美味しく感じ易くなります。

お米の品種の偏りも影響しています。電気炊飯器の普及や食の変化と共に、それに適した品種であるモッチリ系のお米が幅を利かせました。一方ですっきり系品種は少なくなっています。実は1990年代初頭まで、日本人は「すっきり系」と「もちもち系」の品種を割と上手に食べ分けていました。もちもち代表がコシヒカリ、すっきり代表はササニシキ。平成の始めまでは両横綱として人気も作付けも二分していました。

しかし1993年に起きた記録的な冷夏(冷害)による平成の米騒動が、ササニシキの御膝元・宮城県の農家を直撃します。東北地方の被害は深刻でした。ササニシキは冷害に弱い品種だったので、宮城県の多くの農家が被害を受けてしまいました。育成に手間暇がかかり難しく、冷害や病気に弱く、収穫が安定しないササニシキは、翌年以降あっという間に「ひとめぼれ」へ転換されてしまい市場から淘汰されました。その後はコシヒカリ一強となり、他地区でもコシヒカリの後を追う系列のもっちり品種が市場を席巻し、現代に至ることとなりました。

最後に。献立の内容に合わせた炊き分けを

本来ご飯というのは、献立の内容や季節に合わせて、適した品種を用意して、その特徴をちゃんと引き出せるような方法で炊くのが正しいのです。握り・手巻き・ちらしの各種お寿司には、モチモチ系の品種は合いません。それを土鍋で炊くなんて愚の骨頂です。吸い物、椀物(煮物椀)、蒸し物、酢の物、汁物など、汁気の多い献立が並ぶ和食にも適していません。どのような献立かによって、お米もモチモチ系が合うか、さっぱり系が合うか、それに適した米と炊き方で炊き分けることが大切です。

現代の家庭ではカマドを設置するのは非現実的です。しかしカマド程までいかなくとも、強い火力で美味しくごはんを炊き上げることは不可能ではありません。それを簡単に実現できるのがガスコンロと熱伝導率の良い銅の羽釜のコンボです。
機会があればぜひ、今回書き記した極意を元にご飯を炊いてみてください。

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炊き立てご飯はお櫃へ。余分な水分を吸って米の食感が増す。冷ご飯の美味しさは奇跡的。


以上、銅の羽釜による炊飯方法となります。お米の品種、好みの食感、水温、気温、コンロメーカーによって火力などの環境は様々違いますから、あくまで目安として参考にして色々とチャレンジしてください。