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堺北辰 (伝統工芸士 池田美和) の包丁を買う。最高の職人技。プロもおすすめの堺打刃物。

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伝統工芸 青山スクエアで「堺北辰」の出刃包丁を買う

堺打刃物の水本焼き包丁で有名な伝統工芸士の方が伝統工芸・青山スクエアで個展を開いていたので行ってきました。大阪は堺市にある池田鍛錬所の池田美和(いけだよしかず)さん。以前から釣ったイカや魚を捌くのに、ちょいと良さげな包丁が欲しいなと思っていました。日本橋高島屋本店に入っていた有次が撤退してしまったので、直接京都のお店にでも行ってみようかと思案していたのですが、さすがに遠いし、お金もかかるしで、二の足踏んでいました。幸いなことに東京でこのような催しがあると知り、満開になった都内の桜を楽しむドライブがてら、愛車を走らせて伺ってきました。

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会場は1階正面玄関入り口を入ったすぐ横にありました。
池田さんの作られた40本程の包丁の展示と、名入れ&研ぎ方の体験教室が開催されていました。物見遊山で来た訳でもなく、せっかくの機会なので砥ぎ体験に参加し、出刃包丁を一本買ってきました。

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如何ですか?これぞ男の和包丁って感じです。
刃渡り150mm、家庭用の出刃としては標準的で使いやすいサイズです。
私の拙い釣果(ちょうか)や、公営市場・鮮魚店等で購入する魚を捌くには比較的使いやすい刃渡りです。高級和包丁の素材ではおなじみの安来鋼白紙と軟鉄を張り合わせて使った霞包丁(合わせ包丁)と言われるものです。柄は朴の八角で角巻は水牛仕様です。

刻印銘の「堺北辰」は伝統工芸士・池田美和さんが作った包丁の専用銘です。由来は剣術の流派「北辰一刀流」でしょう。坂本竜馬新撰組山南敬助伊東甲子太郎北辰一刀流。幕末の志士達のイメージが重なります。包丁に刻まれた文字の座りが良く素敵な銘です。ちなみに砥ぎの体験教室に参加すると教材用の小ぶりな和包丁(和ペティ/黒打ち/160mm)を1本もらえるので、都合2本の包丁を入手してきました。

試し切りしてみました。 

百聞は一見にしかず。
軽く試し切り (動画参照)。とにかく怖いぐらいの切れ味です。

最初の黒打ち和ペティ包丁は砥ぎ方を教えてもらいながら砥ぎ、池田さんに仕上げてもらったものです。教材用に使う包丁で、参加すればそのまま貰えます。高級な柄や角巻こそ付いてませんが、絶句しそうなキレ味です。砥ぎ教室は受講料が5,000円で、この包丁も含まれたコミコミの料金です。砥ぎ方を色々と教わり包丁も一本貰えるので良い企画だと思います。刃渡りは160mmで諸刃。名前こそ和ペティとなっていますが普通のペティより二回りぐらいは大きいサイズで、チビ柳刃といった雰囲気。多分これ1本で肉・魚・野菜・果物まで、一般的な家庭調理なら9割がたをこなせると思います。

出刃包丁は箱出しのままで切ってます。
プロが言うところの本刃付けを一切していてません。出刃の分厚い刃厚にもかかわらずスルスルと切れ込みます。しっかり砥いだらどのぐらい切れが増すのか楽しみです。刃の峰の厚さがたっぷり8mmぐらいあってズッシリと重いです。試しに鯛、金目鯛、鯵をこの包丁で捌いてみましたが「もっと魚をもってこい」的な気分になりました。

八角型の柄

購入を検討していたのが出刃・中サイズ・白紙の霞包丁ということで、選択肢はなくズバリの1本でした。特に深く考えることもなく手に取りそのまま購入。帰宅して箱を開封し満足げに眺めていたら、ふっと気が付きました。

あれ、そういえばコイツ、柄が八角形だったっけか! 
高価な包丁みたいでよろしい! 

購入時は柄のことなどすっかり忘れていました。
というのも墨流しなど綺麗な紋鍛や本焼きの刃紋ばかり眺めていましたから、柄のことなんて気にも留めていませんでした。思い返してみると、会場に置かれた包丁は、かわいい形をした「おさかな包丁」以外、柄が八角形のものばかりでした。
改めて手にしてみると、やはり八角は握り易すく見た目も洗練されて綺麗です。木の色も落ち着いていて良く、材質もしっとりと高級感があります。

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和包丁の柄の型は小判型(楕円)、栗型(しのぎ付)、八角型、半円六角型などがあり、良い包丁になるほど八角型の柄が付いています。白紙の霞包丁では八角の柄が付いたものは少なく、素朴な小判型や栗型の柄が付いたものばかりです。八角柄が付いているのは高価な青紙鋼を使った包丁に目立ちます。池田さんの包丁は霞の白紙鋼でも高級感のある美しい水牛八角柄が付いていました。良い商品というのは値段に関係なく細部まで正しく体裁が整えてあるもので、それが結果として機能美となって表れます。変にコストカットしてないところに好感が持てます。柄の部分は実際に人の手が触れる部分ですから、見た目はもちろん、手になじんで握りやすい形にも拘りたいところです。

堺の刃物の大半は分業制で製造されています。「鍛冶」・「砥ぎ(刃付け)」・「柄付け」・「名入れ」の各職人さんたちが別々で作業を行います。1本の包丁がそれぞれの職人さんの手を渡り歩き完成していくイメージを持つと分かり易いです。たとえ上級の本焼き工法や高価な青紙鋼を使っていなくとも、柄がしっかりしたものが付いているとすれば、それは刃の方も、鍛冶・刃付けの段階で間違いなくしっかり作られた包丁のハズです。

水本焼きの伝統工芸士

和包丁は「本焼き包丁」と「霞包丁」に大別されます。本焼きとは刃全体が単一の鋼(はがね)だけで火造り鍛造成型されているものを指します。一方の霞は、鋼と軟鉄の2つの鋼材を合わせて鍛接して作られる包丁です。また製作の工程により「水焼」と「油焼」に分かれています。炉で熱して赤くなっているアツアツの鋼をジューッと冷やして焼き入れするわけですが、私のような素人は全て水で冷やしていると勘違いしがちです。油を利用して温度管理が楽な油焼き包丁もあります。高価な和包丁は水焼きが主流です。そのほうが硬度も高くなるようです。

高級和包丁に使われる鋼は主に日立金属の安来鋼で、種類は白紙と青紙があります。白紙は純粋な炭素鋼。青紙はタングステンとクロムを白紙に添加する合金鋼。青紙は白紙より硬いので切れが持続(長切れ)します。鍛冶屋さんも焼き入れしやすい鋼材。ただし脆くて刃欠けしやすい。硬いので砥ぎ難くい。価格も1.5倍ほど高くなる。白紙は青紙より安価で柔らかく、砥ぎやすく良い刃がつけやすいので、カミソリのような鋭い切れ味になる。が青紙ほど刃持ちは持続しない。また焼き入れもしっかり性能を出すのが難しいので本当に良いものを打てる人は限られてくる。白青ともに2号、1号と別れています。2号は柔らかく、1号は硬い。魚の骨とか硬いものをバキッとやるなど手荒いことにも使う出刃については、刃欠けしにくい白紙2号などが適してるかと思います。刺身など柔らかい食材を鋭く切るには青1や白1が適しています。
(※白紙はより柔らかく砥ぎ易い3号もあります)

安来鋼白紙、そのなかでも切れ味に優れる白紙1号鋼で水本焼き包丁を作るのはとても難しく、伝統工芸士の池田美和さん
はその「水本焼き包丁」づくりの名匠。インターネットでもその評判を拝見することができます。このような特殊な技工を持つ方は全国でも数少なく、現在では白紙1号の水本焼き包丁はわずか数名の限られた方しか作れないようです。池田さんの作った本焼き柳刃包丁をネットで見たら10万円を軽~く超えるようなお値段が付いてました。海外サイトで検索してみたら The World's most expensive kitchen knifeというウェブページには、築地の子の日という専門店が販売する池田さんの手によって打たれた先丸蛸引き包丁がランクインしていました。お値段なんと6,980ドル!約77万円です。 伝統工芸スクエアの会場にも高価な包丁が展示されていましたが、それでも5万10万の世界です。世の中にはお高い包丁があるものです。板場に立つお寿司屋の板前さんとか割烹の本職の方のなかには、こういうものを使う人もいるのでしょう。

伝統工芸 青山スクエア より
池田さんの仕事が伝統工芸の公式サイトで紹介されています。

手技TEWAZA「堺打刃物」Japan Sakai Forged Knife

他の和包丁も欲しい!

板場に立つ職人でもない私には水本焼き包丁など不要なので霞の出刃包丁を買いましたが、それでも日本有数の伝統工芸士が作っている高品質・高性能な和包丁に変わりはありません。料理の腕前から言って分不相応な包丁かもしれませんが、下手くそなりにガシガシ砥いでバンバン使いたいと思います。この手の物を買うと「一生モノ」とかケチ臭いこと言い出す輩がいますが、ダメになったらまた買えばよいのです。包丁一本で20年も30年も使われたら堺の刃物屋さんは商売あがったりで、みんな倒産です。ガンガン使って、ガシガシ砥いで、古くなったらバンバン買い替えて、刃物職人さんたちの売り上げに貢献したほうが良いのです。ばんばん使ってナンボ、売れてナンボ。そうでなければ連綿と続く伝統工芸の技なんて未来に伝承されません。

いまどきアップルのスマホが10万円。高校生だって持ってます。しかも3、4年も使えば買い替えです。一方、伝統工芸士の作る包丁なんてどう考えても10年以上は持ちます。また、世のオジサン達のたまにしか使わないゴルフクラブや釣竿、あるいは大して役に立っていないオバサン達の化粧品やアンチエイジング商品などと比較すれば、毎日のように使う包丁は多少値が張ったとしても本当はお安いものです。たまにしかいかないゴルフで、ろくに入りもしない3万円のパター買うなら、伝統工芸士の方が作った3万円の和包丁を買った方がはるかに世のため人のため、と反省しきりの包丁購入記とあいなりました。

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池田さんはこの「お魚包丁」シリーズでも有名です。NHKで紹介されて注文が殺到した包丁のようです。インターネットで取り扱っている刃物屋さんも散見されますが、どこも売り切れです。会場には全種類ちゃんとありました。肉好きな私としては、魚はあるのに、なぜ鶏や豚や牛は無いの?とツッこもうかと思いましたが黙ってましたw。

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会場では柳刃、薄刃、牛刀、三得包丁などいろいろと手にしてみました。こうして見るとやはり堺北辰でバリッと揃えたくなりますね。

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真ん中の白紙3号の本焼き柳刃包丁が75,000円。
これで刺身切ったら美味しそう。これを手に持ってみましたがうっとりしました。
なんというか刃の鎬(しのぎ)の筋が凛としてスッと伸びています。
上手な刃付け(研ぎ)屋さんに収めて仕上げているのでしょうね。

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青紙スーパー鋼の出刃。久次作という刻銘が入ってます。以前は「久次」という名前も使っていたそうですが、堺北辰に統一したそうです。

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鋼を幾重にも重ねて生み出される模様がきれいな「墨流し」包丁。ステンレス製ならダマスカス鋼なんていう名前がついたりします。所有欲を掻き立てる不思議な魅力があります。ダマスカスの多層鋼にありがちな、ウニウニとした模様の下品さがなく、品の良い模様が出てます。

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私のような庶民のために家庭用包丁だってありますw。
とは言いつつも2万円を超えるような価格が多いです。包丁は安来鋼の種類によって性能や価格が変わります。青紙→白紙→黄紙の順で耐摩耗性、つまり切れの持続性が下がります。一番「長切れ」するのは硬度が高い青紙。お値段も高くなります。ただし硬いので脆く欠け易い。白紙は青紙よりは柔らかくて鋭く切れるけど青紙ほど長切れしない。用途に合わせて選ぶとよいでしょう。

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青山スクエアでは、常設で池田さんの堺北辰をはじめ堺打刃物の伝統工芸士の手による包丁が販売されています。210mmの牛刀が手ごろな価格で売っていたのですが、我が家の牛刀がまだ存命中なので見送りました。

今回の展示で一番気になったのが写真の一番右端に写っている関西型の鎌形薄刃包丁195mm。関東ではあまり見かけない形です。安来鋼白紙2号で柄も八角タイプが付いて理想的です。程よい重さで手に吸い付くような感覚でした。せっかくなので買っておけばよかったかなと思いつつも、楽しみは次の機会に取っておくことしましょう。秋には再び展示会があるようです。お時間のある方は是非どうぞ。